誰が彼らを殺したか?
とある山間の農村で、作物が獣に食い荒らされるという被害が相次いでいた。
村民達が獣害に頭を悩ませていると、その中の一人が言った。
「獣が入ってこれぬように、畑の周囲に紐を張ってみたらどうだろうか?」
村民達は早速、人間の足首程の高さにワイヤーを張ってみた。
すると、効果はテキメン。驚く程作物の被害は減ったのだ。
だが数日後。農村に住む老夫婦の持つ畑の入り口で、若い男性が死んでいるのが発見された。
警察の調べによると、死因はワイヤーに足を捕られ、頭部を強く打ったことによる事故死だということがわかった。
山登りが趣味の被害者は偶然この農村に迷いこみ、不幸な事故にあったのだろう。畑を見ようと近付いたのか、はたまた一つくらい盗ってもバレないと思ったのか……。そこは本人のみが知ることだ。
だがこの事故によって、畑の所有者である老夫婦にメディアの矛先が向いた。
「未来ある若者の命を奪った」
「危険性は予測できたハズだ」
「残された遺族が可愛そうだ」
ある週刊誌では、被害者の恋人を取材し涙ながらの記事を書いた。また、ある報道番組では現場のワイヤーを再現し、レポーターがこれみよがしに躓いてみせた。
連日の様に記者達は農村を訪れ、スタジオではコメンテーターが眉を吊り上げ老夫婦を非難した。
そんなある日、老夫婦が自宅裏の納屋で首を吊っているのが発見された。その報を、各局のアナウンサー達はさも不思議そうに読み上げた後、口を揃えてこう言った。
「何故、この様なことが起こってしまったのでしょうか?」
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