まどろみ


 まだ まどろんでいる

 わたしだけの この小さな部屋で

 このまどろみが終われば

 わたしはどうなるのだろう


 あの道の先 行ってみたくて

 震える足を踏み出した でも

 次の一歩に行けないで 引き返した


 あの虹の下はどこなのか

 確かめに行きたかった でも

 ためらっているうちに 虹は消えた


 ここを離れて 遠くへ行くのが

 ぼんやり怖くて どこへも行けず

 遠くを見ることも怖くなり

 この小さな部屋の扉を閉ざした


 あの子のこと もっと知りたくて

 震える声をかけてみた でも

 次の声が出て来ない

 だから「さよなら」って言った


 あの子のこと 恋しくてたまらず

 でも だれかが先に声をかけていて

 もう あの子のことは知りたくないんだ

 そう 自分に言って聞かせて 帰って来た


 だれかに声を かけようとしても

 それで何かが 壊れてしまう

 だれかに心を寄せるのも怖くて

 この小さな部屋の扉を閉ざした


 まどろんでいる

 まどろみのなかで わたしは自由

 好きなところに行き

 好きなものを食べ

 好きなようにわたしの恋を楽しんだ


 ずっとまどろんでいたいけど


 だれかが小さい部屋の扉を叩きに来る

 その前に目覚めよう

 だいじょうぶ

 わたしは まどろみのなかで夢を見ていた

 その 夢の力に 背中を押されて

 わたしは 夢にも見たこともない

 遠いところへと 羽ばたいて行ける

 遠いところへと

 羽ばたいて行こう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る