第四話 白 霞、招かれざる客と対峙すること。
ここなら人の目にさらされない。
女二人は、立ったまま対峙した。
十六歳の女、
今は、富豪の
表情は、女としての自信にあふれている。
「
「お許しくださいまし。あたしはどうしても、こうやってお話しをさせていただきたかったんですわ。霞姐姐。」
それは、妾が妻にたいして呼ぶ呼び方だ。
「霞姐姐なんて呼ばないで!」
「お気にさわったのなら、謝りますわ。」
「主様。あたしの気持ちは、今でも主様の家婢でございます。慈悲深い主様、このとおりですわ。あたしをお許しになって。」
(あたしが
あたしは騙された!
虫も殺さぬ顔をして、この女は、
「どうか話を聞いてくださいまし。あたしは主様の家婢。
「恩を自覚しているなら、なぜあのような
「ああ、お許しくださいまし。お許しくださいまし。」
まるで、自分は悪くない、被害者だ、というように。
何も知らない者が見れば、美女が、吹けば消える蝋燭の火のように震える、儚い姿だった。
「どうか、どうか話を聞いてくださいまし。そうでないと、あたしは屋敷に帰れないのですわ。助けてくださいまし。お見捨てにならないで。」
どうやら話を聞かないと、ずっとこの調子を続けるつもりのようだ。
「さっさとお話し。」
椅子に腰掛けた
「
「勝手なことを言わないで! あたしはもう離婚したのよ。」
「ところが主様。
「なっ!」
悪夢が蘇る。
「ええ、
愛されておいでですのね、羨ましいわぁ。」
目を細めて笑う
「こう伝えろ、と。いつまで
たまりかねて、
「
と口をだした。
「口を挟むな! 黙れ!」
と、兄を睨みつけた。
「おまえは何も見てない。
何もわかってないんだな。
何を考えてるんだ。
夫に仕え、夫が思うことを口にする前に奉仕し、夫を喜ばせろ。それが妻というもの。
わからず屋の女は許さない。
必ずオレの元に帰ってこさせる。それ以外の運命はおまえにない。そう教えたはずだろう。
わからないなら、いくらでも教えてやる。後悔させてやる。」
悪夢が
頭が真っ白になる。
くくく、と
「たしかに伝えましたわ。一言一句、間違えないように。ね?
あたしの伝言はこれで終わり。
あたしと一緒に帰りましょう?」
「か、かえらない……。」
「あたしは女ですから、今日、力づくで連れて帰ることまでは、
でも、良いんですの?
意地を張れば張るほど、
どうせ、
(怖い。助けて。)
(
ここにいない男に。
ざざ、と奥庭の草を踏み分ける音がした。
あらわれたのは、
(嘘。
眉目秀麗な男は、颯爽と立ち、
「
↓挿絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16818093093549729482
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます