第九話 應 俰、三夷教について教えてもらう事。
大川は、青い目の
大川が一番背が高いが、
大川には、この左頬に刀傷のある、陰気な顔をした男が、自然体でありながら、まわりに常に気を配っているのがわかっている。
西市には人通りが多い。
貴人や官僚、
それだけではない。実にいろんな衣、いろんな人種がいる。
「長安に来て驚いたのは、まずこの、人の多様さです。」
大川が話をふると、
「ええ。
西域からの商人、職人、芸人、宗教関係者がいますね。」
(宗教関係者?)
「やはり、仏教……?」
バカにしたような笑いではなく、柔らかい笑みだった。
「世界は広いのですよ?
「仏教ではないのに、唐は許している、と……。」
「西域から珍しい
大川は話に引き込まれた。
「というと……?」
「
その
そしたら、
(可汗。
そう思うと同時に、もし日本にも、その
「それは……。回紇人の多くが、というお話でしたが、具体的にはどれくらい
「それはワシも存じ上げませんが、なんでも、回紇の国教にする一歩手前までいったそうですよ。国教にする前に、可汗が亡くなったので、今は
ワシが知ってるのは、それくらいですね。」
「そうですか。」
(唐には、いろんなものがありすぎる。日本が余計に混乱するような、日本に相容れないものは、持って帰ることはできない。我々は慎重に選別せねば……。)
「そうそう、
彼らはそうやって広く交易するのです。物を移動させれば、回紇では安い毛皮も、長安ではもっと高く売れる……。そうやって世界は繋がり、人が集まる唐は、世界で一番利益の集まる場所と言えるでしょう。」
「ほう……。」
大川は目を細め、笑顔で頷く。
新しいことを知る事は快い。
(この方に話し相手になってもらって良かったな。
知識が豊富だ。
話もわかりやすく、こちらを見下すような態度もない。これは良き縁だな。)
大川がしげしげと
心なしか頬が赤い。
まるで女みたいな反応だ。
大川はすこしだけ、目に冷たさをのせて、
ちなみに、大川は、女嫌いである。
どれくらい嫌いかというと、大豪族の跡継ぎ、二十七歳という年齢で、
かといって、男が好き、というわけでもない。
大川は、美男子でありすぎた。
大川のまわりに女は常にあふれ、大川の気をひこうとし、べたべた、いやらしい目で大川を見た。
大川はすっかり、女というものが、
大川にとって、女に近づきすぎると、
「あたしの事を妻にしてぇ。」
「あたしと一晩良い思いをしましょうよ。」
と誘われてしまったり、あからさまに誘われなくても、
「あんたを狩ってやりたい。」
という狩人のような目で舌なめずりされてしまう。
大川はいつでも、女に狙われる獲物だった。
(
ご主人が私たちを騙す理由がないからな。
……もし、女なら、私はもっと距離をとる。こんなに気兼ねなく話すことはない。)
大川は常に女に一線をひく、女嫌いだったのである……。
* * *
【要点まとめ】
・唐の
唐は商人の交易推進の為、ある程度の布教活動も許していた。
・
大川は日本に置き換えて想像し
●しかし上記の事は読者は忘れて良い。宗教関係はもう触れない。
重要なのは、大川は
大川は女嫌いなので、もし女だとわかっていたら、もっと距離をとって接していた、という2点。
[参考]『シルクロードと唐帝国』
↓挿絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16818093090588740642
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