第十話 白 霞、口馬行について教える事。
(そ、そんなに顔を見ないでー!)
男ではないとばれる。
それ以上に、ただただ恥ずかしい。
兄のふりをしてはいるが、実際は、
「
と穏やかに訊いた。
(教えてあげねば。)
「そうです。東市もしくは西市に
「はい、同業者が同じ並びに、
「そうです。西市には、様々な
金銀行、衣行、
ちなみに、
実にさまざまな
「あれは
文化の
「
唐産を、家生。
外国産を、蕃。
まずそれで分ける。のち、老(60歳以上)、丁(21〜59歳)、中(16〜20歳)、小(4〜15歳)、年齢でわけ、品質の良さで、上、次、下、と分けられます。」
品質を記した木の札が、首からかけられている。
「男女それぞれいますが、丁と中がほとんどですね。」
「そうですね。その年齢が
「蕃は、唐語がわからないのではないですか?」
「まさか! ある程度、知識を叩きこまれてから、
唐語が話せない
さらには、踊りや歌、何か一芸ができる奴婢ほど価値があがります。」
「家生の次の中婢一口、五千文。家生の次の去勢馬一
「そう。同じくらいの値段ですね。」
「これは高いのか、安いのか……。」
「難しい質問ですね。
馬を例にとると、馬を持てるのは、王族や貴族や官僚、富豪に限られます。良民が持てるのは、せいぜい、
ひるがえって、
霞自身は、口馬行を見ても、何か思うところはない。産まれた時から目にしている普通の光景だ。
母は違う。
母は、口馬行の前を歩くのをいつも避ける。
きっと、母は、
(この話はこれで切り上げて、次の
そう判断した
(あ!)
通りを歩く人影のなかに、古き友、
左右にそれぞれ子供の手をにぎり、背中に背負いヒモで赤子を背負って、顔に化粧っけもない。
なぜか、
手をつなぐ子供が、
「お母様、お腹すいた。
とねだるが、
「うるさい! 銭がないのよ!」
と叱りとばし、そのまま
(
一年に何回か会う時には、金持ちらしく着飾っていたのに……。
商売が傾いたのね。あたしには何も言わなかった。言ってくれれば……。)
(あたしは、何も見えていなかった。)
「どうかしましたか?」
と訊ねてくれた。
「いえ……、なんでもありません。」
(もう昔のこと。
過ぎた事に思い悩んで、あたしの人生を曇り空のようにするのは、もうたくさんよ!
あたしは前を向くの。)
* * *
大川の目の前で、
(不思議なひとだな。
なぜか恥ずかしそうな顔を見せるかと思えば、内面の強さを感じさせる顔もする。
やはり女ではない。
この人は女が持つ
博識なのも素晴らしい。
我々の協力者になってほしい人だな。)
* * *
【要点まとめ】
唐、めっちゃ栄えてた。
お店はそれぞれ、同じモノを扱う同士、一列に並んで店を開く決まりだった。(
奴隷売買(
①出身地
唐産を、家生。
外国産を、蕃。
↓
②年齢
老(60歳以上)
丁(21〜59歳)
中(16〜20歳)
小(4〜15歳)
↓
③ランク
上
次
下
で分けられ、馬と同じような売り方で売買された。
●このあと、店の種類も、奴婢のランクづけも作中でてこないので、読者は忘れて良い。
ちなみに、奴隷である「奴婢」は、日本では「ぬひ」、唐では、「どひ」とフリガナをふる。
日本の歴史を扱う本では、「ぬひ」、中国の奴隷制度にふれる本では、「どひ」と言い表している為。
筆者の意見としては、奴隷制度には絶対NO。
人類皆平等! 差別反対!
見栄っ張りの
再登場はない。
[参考]『シルクロードと唐帝国』
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