第三話  ◆登場人物紹介◆(とオマケ)

【要点まとめ】

 ハク は、 セイが5人の妾を囲っていると知らずに妻となった。失意の結婚生活となったが、七日に一回の共寝、夫のモラハラ、イヤミな義母の相手、妻としての宝石店の手伝い、全てを受け入れ、耐えてきた。

 夫が女と浮気してる現場を見て、我慢の限界をむかえ、とうとう離婚する。




【登場人物紹介】


 ・ハク ……ヒロイン。三十歳。

 たおやかな美女。

 胡人こじん(白人種)と唐人のハーフ。ラピスラズリのような美しい青い瞳から、結婚前は、茶肆ちゃし木蘭もくらんしょう蒼玉ラズワートと呼ばれていた。

 


 ・ セイ……の元夫。三十四歳。

 金持ち珠玉しゅぎょく(宝石店)の跡取り。

 支配欲の強いモラハラ夫。

 一人の妻、5人の妾、妓楼遊びも定期的にむかうという生活を送りながら、若い美人な家婢かひ(召使い)に誘惑されたらすぐにのっちゃう。

 どんだけ女好きのお盛ん男や。

 との離婚に納得しておらず、まだ、に執着している。



 ・薔薇ショウビ……十六歳。薔薇の名の通り、かなりの美女。

 本来は家婢かひではなく良民(平民)で、火事にあい父親が死に、路頭に迷っていたところを、に救われた。

 贅沢がしたいがために、霞の夫の妾の一人に加えてもらおうとする。

 企みは成功、妾として迎えられた。



 ・ショウ バイ…… セイの母親。再登場の予定はない。







     *   *   *




【おまけ】




「まずい!」


 豪勢な中庭で。

  セイの母親、ショウ バイは、家婢かひが淹れたお茶を、びしゃ! と、土の地面に捨てた。

 家婢かひは青くなり、慌てて拱手きょうしゅした。


「申し訳ありません。」

「茶葉を変えたの?」

「いえ、若奥様……、元若奥様がお使いになっていた茶葉です。」

「ならもっとうまく淹れなさい! あたくしにまずいお茶を明日も飲ませたら、承知しませんからね。おさがり。」


 家婢をさがらせる。


「ふぅ……。」


 ショウ バイはため息をついた。

 つい先日までは、毎日、この時間に元嫁がお茶を淹れてくれた。


 あの嫁には、子供が作れないという点を除いて、不満はなかった。

 珠玉しゅぎょくの店先に毎日立ち、誠心誠意客に接し、実際、あの嫁が立つと珠玉しゅぎょくの雰囲気は良く、商売はうまくいっていた。


 息子に殴られた、と、顔を腫らして泣きながらここに駆け込んできた時。


(殴られたぐらいでおおげさな。)


 はじめはそう思った。

 でも、話を聞いてるうちに、気が変わった。

 今まで息子は、手をあげた形跡はなかった。

 でも、いったん手をあげたということは、これからも手をあげるだろう。


 あの子の父親のように。


(しかもあの子は、顔を殴った。あの子の父親だって、あたくしの顔だけは殴らなかったのに。)


 ショウ バイはため息をつく。

 ショウ バイは、夫を愛していた。そして、暴力をふるう夫を、憎んでもいた。


 あの嫁が離婚したいと言うのを聞いて、それも良いか、と思った。

 これから一生、暴力をふるわれる事におびえる人生を送るより───。

 子供のできない嫁であるし───。


 何より、この嫁は、毎日、お茶の時間に、心を込めてお茶を淹れてくれた。

 どんなにイヤミをぶつけようとも。

 贅沢をしなれたこの身にはわかる。

 あれは、使う水、お湯の沸かしぐあい、お茶の泡立ちまで、隅々に気を配ったお茶だった。

 あの元嫁が淹れたお茶は、風味と味が素晴らしく、神秘的な泡立ちが豊かで、あの泡立ちのなかには計り知れない滋養がと詰まっていそうな一杯だった。

 元嫁は、一度も手を抜かなかった。

 それを、十五年続けてくれたのだ。

 その日々がなかったら、きっと、離婚を許すという、こんな判断はくださなかっただろう。

 これは、お礼だ。


(せめて、暴力をふるわれる事におびえない生涯をおくりなさい。)


 ショウ バイが、もう他人となった元嫁に思う事は、それだけだ。






   





↓挿絵です。

https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16818093090510025043

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