大文字伝子が行く308

クライングフリーマン

麻生島の咆哮

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。


 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。

 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 西部警部補・・・高速エリア署生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』を手伝うこともある。早乙女愛と結婚した。

 橋爪警部補・・・愛宕の相棒。丸髷書生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』を手伝うこともある。


 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 江南(えなみ)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。

 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。

 筒井隆昭警部・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

 原田正三警部・・・元新宿風俗担当刑事。戦闘の記録及び隠しカメラ検索を担当。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 西部(早乙女)愛・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向だったが退職。EITO非正規隊員。


 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 藤井康子・・・伝子のマンションの仕切り隣の住人。モールに料理教室を出している。EITO準隊員。


 興梠(こおろぎ)太郎・・・元総裁立候補者。元コロニー担当大臣。

 石橋茂樹・・・元総裁立候補者。元防衛大臣。

 大泉駿次郎・・・元総裁立候補者。大泉元総理の息子。元環境大臣。

 麻生島太郎・・・移民党副総裁。副総理。再選。

 市橋早苗・・・移民党総裁。総理。


 中山ひかる・・・愛宕の元お隣さん。Linen他、アナグラムが得意。伝子達の後輩になった、大学生。

 青木新一・・・Linenが得意な大学生。SNSに詳しい。Linenは複数のグループを持っている。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 ※総理官邸。組閣時などの記念撮影は、旧官邸では西階段で行われていましたが、平成14年9月30日の現官邸で初の組閣以降は、2階から3階へつながる階段で行われています。エレベーターが隣に設置されています。総理大臣官邸において大臣政務官に対して辞令交付を行った後、行われます。

 ※彼岸花の別名「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」は、サンスクリット語で天界に咲く花という意味。おめでたい事が起こる兆しに赤い花が天から降ってくる、という仏教の経典から来ています。サンスクリット語では『manjusaka』(まんじゅしゃか)と書きます。


 午前0時。

「「やあ、諸君。よく間に合ったよねえ。今度は、内閣のお祭りに参加することにしたよ。間に合うかな?惨事に。いい日和だな、旦那日和だな。字の濁音都合さ、惑ってる、矜持さん。』

 Base Bookには、そんな挑戦状が現れた。

 宿直していた、あかりは、メールのアラーム音に驚いて、自分のスマホを見た。

 違う!!少し離れた所に置いた、スマホだ。

 メールの内容は、Base Bookの挑戦状が来たという内容なので、すぐにBase Bookを開いて緊急事態と判断した。

 決まり通り、東京本部司令室、警視庁テロ対策室、伝子に転送した。

 伝子から、折り返しの連絡が来る前に、あかりは、井関五郎にスマホで電話した。

「ごろちゃん、来た!」「何が?」「挑戦状よ。ダーティー・ブランチ。」

「連絡した?」「した。」「じゃ、僕も待機する。」

 井関五郎は、ロバートとオスプレイのメンテナンスをした後、オスプレイ内で仮眠していた。井関とあかりが交際していることは、まだ公になっていない。知っているのは、ロバートとジョーンズと結城だけだった。

 伝子から、折り返しの電話が、あかりのスマホにかかって来た。

「おねえさま、大変です。」あかりは事情を説明した。

「今、ウチの旦那がPC開いて、Base Bookを確認しているところだ。今度のダーティー・ブランチは『諸君』が口癖らしい。日和?何のことだ?」

 電話の向こうで、高遠が何やらやっていて、伝子から替わった。

「判った。あかりちゃん、追加のメールを各位に送ってくれ。今日、早朝。組閣記念撮影の前に襲われる。総理官邸が危ない!!と。」

「え?」

「旦那日和(だんなひより)は、『ひなだんより』のアナグラムだ。詰まり、組閣記念撮影なんだ!!後の部分は、これから解く。完璧じゃないが、正しければ攻撃宣言だ。」

 午前9時。総理官邸前。

 ジープが数十台、並んだ。

 その後方に、戦車とSATの装甲車が並んだ。

 一方、官邸の後方空に、自衛隊のオスプレイが3機、更に上空に、米軍の戦闘機、イーグル軍の戦闘機が旋回しだした。

 どこからか、スピーカーから声が聞こえた。

 就任したばかりの仁礼統合幕僚長だった。

「お前らさあ、舐めすぎ。売られた喧嘩は買うよ。領収証、用意しとけよ。」

 午前11時。総理官邸。

 早乙女と工藤は、閣僚が帰った後、総理に呼ばれた。

「今日は、ご苦労様。もう帰っていいわ。」

 そう言うと、市橋総理は、よろけた。

 早乙女が、秘書官を呼びに行き、工藤は119番した。

 正午。モール。喫茶店アテロゴ。

 福本が、物部とカウンターで話し込んでいると、高齢者の男性が来て、ポーチと杖をガラス窓側に置き、注文をした。辰巳が注文を取り、紅茶がオーダーされた。

 そこへ、ウエイトレスの泰子が帰って来た。

「福本さん、買って来ました。」と、泰子は『杖カバー』を福本に渡した。

 福本は、「よろしければ、これを。百均ですが、間に合わせででも。」と、高齢者に差し出した。

「どうして?」「その杖カバー。随分、年季が入っていますね。すり切れているみたいだから。いやあ、僕の叔父はタクシードライバーなんですが、手袋破けているのに、ついつい面倒で新品にしないまま使ったりしているものですから。滑ったら、杖の役目果たせませんよね?」

「いや、それは申し訳ない。おいくらですか?」「いや、間に合わせだから、百均だから。」

「そう言えば、映画館の向こうに出来てたな。そんなものまで売ってるんだ。どうぞ遠慮なく使って下さい。」物部が」フォローして言った。

「それでは遠慮無く。」

 高齢者は、1時間ほど読書をして、帰って行った。

 福本は、丸髷署に電話した。「愛宕警部、お願いします。福本と言います。大文字伝子の後輩の。」「今は、出掛けていますが、替わりの者を伺わせます。」

 電話はすぐ切れた。

 15分後。みちるがやって来た。「代理の者でーす。ウチのダーリンに何か?叔父が。お前、行って来いって言うから来たけど。」

「あれ?今の電話の相手、署長さん?」「うん。」「あ、これ。」

 福本は事情を話した。「どう見ても、高齢者じゃない。誰か、様子を見に来たんじゃないかな?先輩の家も、副部長の店のことも『コンティニューが抜いた』情報じゃないらしいから。」

「成程な。まあ、ウチもEITOの大幅にセキュリティー強化されてはいるけどな。」と、物部は笑った。

「指紋、調べればいいのね?あ、おねえさまには、私が報告しておくわ。」

 みちるは、布にくるまれた杖カバーを、押し頂いて出て行った。

 午後3時。府中市。府中市郷土の森博物館。

『市制施行70周年記念 郷土の森 曼珠沙華まつり』が行われていた。

 地元警察の協力の下、博物館内に多くの防犯カメラを原田は設置した。

 高遠が、必死で、青木やひかるの協力の下、Base Bookの挑戦状の謎解きをした結果、『三億強奪の地、待ってるさ、郷土三時』だった。

『三億円強奪』と言えば、半世紀以上前の『三億円強奪事件』のことで、府中市の代名詞になっているが、『じ』を『地』に読み変える。詰まり、府中市郷土の森に午後3時に来い、ということだ。時間は『惨事』にも現れているが、『惨事』は今朝の事件のことだろう。文脈から2つの事件が類推出来た。

 攻撃をダブルヘッダーにしたのはいいが、EITO以外で対処するとは想定外だったに違いない。同時進行で、お昼に物部の店に様子伺いに行ったのは、EITOに通じる出入り口があるかどうかを確認したかも知れない。

 そんなSFっぽい仕掛けはないが、EITO東京本部やEITO秘密基地は外観からは絶対想像出来ない。本部は焼失以来、地下にある。地上は公園だ。

 なぎさが、旧府中町役場に立っていると、「お前が隊長か?」と言いながら、火炎放射器やガスバーナーを持った一団がやって来た。

 声をかけた一団のリーダーに、「副隊長だ。火の出るものは御法度だがナア。こういうところでは。」と、なぎさは冗談で返した。

 一団は、物言わず散開して、火を放とうとしたが、どこからか、ブーメランが飛んで来たり、シューターが跳んできたりして、なかなか攻撃に移れない。

 シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。

 エマージェンシーガールズは、樹の間をくぐって攻撃し、樹の枝に火が飛び散った時は、素早くフリーズガンで消火した。フリーズガンとは、文字通り、冷凍水が出る銃だ。

 エマージェンシーガールズの武器は、通常の拳銃ではない。民間企業だから、火薬の入った弾の拳銃は携帯出来ない。その代わり、様々な武器で闘う。

 正面に回り込めた隊員は、水流弾が出る水流ガンや胡椒弾が出るペッパーガンも使う。

 水流弾とは、液体窒素を応用した、被弾するとグミ状の水に変化する弾で、胡椒弾とは、胡椒やガーリックといった台所調味料を捏ねた弾で、どちらも敵の動きを鈍らせる。

 白兵戦になると、エマージェンシーガールズはバトルロッドやバトルスティックを使う。バトルロッドとは、3段収縮出来るバトルスティックである。

 1時間。闘いは、あっけなく終った。

 場所柄なのか、兵隊があまり調達出来なかったのか、50人程度だった。皆、寝そべって青空を見ている。

 日本人はリーダー、詰まり、『枝』だけだった。

 なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た笛で、通常の大人の耳には聞こえない。簡易通信機だが、待機している『片づけ隊』に密かに連絡する為に使用されることが多い。

 ひょっとしたら、今朝の軍団と分散したのかも知れない、となぎさは思った。

 間もなく、愛宕警部、橋爪警部補、西部警部補が警官隊を引き連れてやって来た。

 EITOには連行して取り調べる権利がない。それは、警察の仕事だからである。警察からの出向組も、エマージェンシーガールズとして行動する際は、逮捕連行出来ない。

「一佐。えらいことになりました。」と、愛宕はなぎさに報告した。

「総裁選で落選した3人が暗殺されました。今朝じゃなく、この時間帯です。」

「3人?」「興梠太郎、石橋茂樹、大泉駿次郎の3人です。通称、KIO。」と、横から橋爪が言った。

「ウチの愛や工藤くんは、国会の事件の後、午後から帰宅しました。知っていたら、SPとして・・・。」「いや、西部さん。予測は不可能だった。仕方無いよ。」

 橋爪は西部をなだめた。

「不可抗力だ。後は愛宕達に任せて、帰還しろ。」イヤリングで聞いていた、伝子が司令室から、なぎさに指示した。

「はい。おねえさま。了解しました。」なぎさは、歯を食いしばって、皆に帰還を指示した。

 午後5時。国会議事堂。

 麻生島太郎は、国会内で咆哮した。

「本来は、市橋早苗総裁総理が、所信方針演説を行う予定でした。だが、ご存じの通り、総理官邸は襲撃され、興梠太郎氏、大泉駿次郎氏、石橋茂樹は暗殺されました。マスコミは、警察もEITOも対応出来なかった、と騒いでいるが、親那珂国派の議員、媚那珂国派の議員。あなた方のせいですよ!!もう、知られていることなので敢えて言いますが、三人は親那珂国派の議員でした。総理再選の際に親那珂国派の議員、媚那珂国派の議員は閣僚から一掃されました。親那珂国派の議員、媚那珂国派の議員は覚悟しておくことです。自らの命は自ら守りなさい。EITOや警察は、閣僚を守るのに必死でした。予知出来ない暗殺に間に合う訳が無かった。敵の報復に、あなた方を守れる組織はありません!警察、自衛隊、EITOもあなた方を守り切れない。それぞれの組織はそれぞれの職務を全うします。あなた方を守る責務はないのです。警備員でもSPでも自費で雇いなさい!公費からは1円も払うべきではない。総理は、心労に倒れました。暫くは、不肖麻生島太郎が代行します。テロは許されるべきではない!テロリストの名前すら言うべきではない!!」

 麻生島がふらついたので、秘書官や警備員が駆けつけた。

 テレビ中継は、中止された。

 午後7時。伝子のマンション。

 ニュースの録画映像を観た綾子は言った。

「今日も大変だったのね、婿殿。私で良ければ慰労するわよ。」

「お義母さん、笑えないですよ。もう出来たんじゃないんですか、ふかし芋。」

 そう言いながら、高遠は藤井を手伝って、夕食の準備をした。

 伝子は、あかりと井関五郎を連れて帰って来た。

 2人は、すぐに土下座をした。理由は、伝子は結城から聞いていた。

「お仕置き部屋要る?EITOに改造して貰おうか?」と、高遠は平然と言った。

 藤井と綾子は顔を見合わせた。まだ、事情を知らなかったからだ。

 ―完―


 ※このエピソードは、「特命機関夏目リサーチ4」に続きます。

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