第5話:おねーちゃんの考え
秋山家に「おねーちゃん」が肩を落としてやってきた。よくないニュースのようだ。家にいたシロもアオも一目見ただけでそうと分かった。子どもたちは知識はないが、大人たちの雰囲気とか目に見えなかったり、言語化するのが難しい変化に敏感だ。難しいことは分からないが、子どもたちは大人たちが思っている以上に多くの情報を感じ取っている。
「生活保護を申請してみたけど、未成年が……子どもが申請しても受け付けてくれなかった……ごめんねシロちゃん」
「おねーちゃん、どういうこと?」
シロは何も言わず、受け答えはアオが行った。シロの代わりと思うからこそ訊くことができたのかもしれない。自分のことだったらそれ以上怖くて訊けなかったはずだ。
「国とか県とかは助けてくれないってこと」
答える代わりにシロは目に涙をいっぱいに浮かべていた。言い換えることで大まかな内容は理解できたようだ。「どうしようもない」。シロにはそれだけ分かれば十分だった。おねーちゃんは思った。こんな世の中は間違っている、と。この子たちはなにも悪くない。
少なくとも自分はシロとアオより歳は上だ。生活保護を取り付けることはできなかったけど、他に何かできることがあるはず。そう決意した。
「おねーちゃんがなんとかするから大丈夫! 心配しないで! いい考えがあるの!」
この時点では「いい考え」はなかった。でも、目の前の子どもたちが絶望してしまわないように、できるだけ希望のある言葉を投げかけた。今言った嘘もあとで実現すればそれは嘘じゃなくなる。それは同時に後戻りできないということでもあったが、彼女はまだこの時はそれに気づいていなかった。
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