第5話:ネットの掲示板の反応 2件目

 リーマン「やっぱ、箱入り娘殺人を追いかけよう!」


 文字だけでもリーマンが興奮気味なのが伝わってくる。


 ここはネットの掲示板「犯罪捜査研究室」。日常の犯罪について背景を調べたり、犯人の心理状態を研究する掲示板だ。そうはいっても単なる雑談の場でもあった。


 室長「犯人が文豪のやつだよね? 2番目の予告殺人が行われたっていう」


 リーマン「そうそう! それ! JKが全裸で手足切断されて段ボールに詰め込まれて宅配便で自宅に送り付けられたやる! 犯人は絶対猟奇殺人者だろ! しかも、まだ生きてたらしい!」


 インテリ「猟奇殺人の可能性は高いね。しかも、連続殺人」


 リーマン「JKヤラれちゃったのかな? 親は泣いてるだろ、こんなの! 色んな意味で全国に公開だよ!」


 キャバ「やめなよー。不謹慎。親御さんのこと考えたら……」


 リーマン「す、すまん。ちょっと興奮した。映画みたいな猟奇殺人だし、この板にぴったりだと思ったから」


 インテリ「たしかに常軌を逸していますよね。犯人とか周辺の人間の思考の分析とか心理状態の考察とかには良いと思います」


 リーマン「バラバラ殺人なのに、生きてたケースって過去に存在するん? 生きたまま手足切断で段ボールに詰めるとかどんな発想!?」


 最初は室長の提案ではあったが、この事件を追いかけるには面白みがなかった。犯人は「文豪」なのだ。それがどこの誰なのか分かるはずもない。


 前回の福岡市内の自殺者の情報を持ち寄った時も年間の福岡市内の自殺者の数は300人程度いるはずが、掴んだ情報は一人分だった。


 自分たちは「殺人事件研究会」ではあるが、犯人の特定まではたどり着けないことを身を持って知ったから。普通のネット民には捜査権はないし、そんな時間もお金もないのだ。


 主婦「ネット上ではお祭りですけど、ワイドショーとかではやってないですよ?」


 リーマン「だいたい先にネットで話題になって、しばらくしてワイドショーとかニューでやるからな」


 インテリ「報道機関は裏付けとか、確認とか、許可とかが必要ですから。信憑性が高くなる分、情報が出てくるのは遅くなります」


 X(旧ツイッター)でもバズった記事はテレビなどで公開する時は事前に投稿主に許可を取る必要がある。ネットではズバズバ拡散されていく事柄もテレビに出すには2〜3日遅れるのが常である。


 リーマン「あ、分かる! 昔、台風の時、家の前の排水口から水が溢れて噴水みたいになってたから動画撮ってXに投稿したんだよ。そしたら、翌日にテレビからDMきて『放送で使わせてください』って連絡きた!」


 キャバ「そういうのってお金もらえるの?」


 リーマン「いや、ないって」


 キャバ「そうだんだー」


 インテリ「特ダネ映像とか動画にお金を払うと、フェイクを作るようになるんでお金は払えないっていう考えがあるみたいですね」


 リーマン「動画渡しても俺にメリットないから、一応投稿者の名前だけ表示させてもらった」


 キャバ「結局だしてるじゃーん!www」


 リーマン「出したかったwww」


 キャバ「でも、絶対これ次があるでしょうー! 『文豪』の予告殺人。しばらく続くと思うし、これでいいんじゃないー?」


 リーマン「だよな! だよな!」


 なんとか流れに乗りたいリーマンがキャバを援護射撃した。


 室長「じゃあ、この一連の文豪の連続予告殺人についてそれぞれ次回までに犯人のプロファイルをしとくってことで……」


 リーマン「よしっ!」


 キャバ「りょー」


 主婦「分かりました」


 インテリ「了解」


 ネットのある掲示板もこの事件を追いかけて行くことが決まったようである。

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