第36話 エンドコンテンツ対ラスボス
魔界の帝王エンド・ウタカ。隠しボスで魔界の帝王。エンドコンテンツのお遊び要素として用意されたボスだ。一応、数百年前に勇者によって倒された魔王の師匠って設定がある。
強ければ魔族でも人間でも誰でも認めてくれるバトル脳の持ち主で、倒せば褒美としてグングニルをくれるんだけど、槍使いを育ててないとあまり意味はない。
「なんで魔界の帝王がこんなところに出て来てんだよ」
「そこら辺を歩いてた」
ルカが森の奥を指差し、涼しげな顔をして言ってくる。
「魔界の帝王がケープコッドの森を散歩してんなよ」
『我は強者を求めている』
「求めるならもっと終盤の街に行けよ。ここは中盤だよ」
『汝ら、我を楽しませる準備はできているか?』
「できてねぇわ!」
『汝らの全力を持ってかかって来い』
「全然話を聞いてねぇ!」
これって授業の一環?
ラスボス先生が、「お前らの敵は班だけじゃない。魔物も襲ってくる。相手の班のことを考えながら、自然の脅威である魔物のことも頭に含めて戦闘に臨むことだ」とかなんとか言ってたよね。魔界の帝王も襲って来るってこと?
『ふんっ!』
魔界の帝王が片手でグングニルを一振りしてみせる。
激しい風圧がこちらに襲いかかる。
「ご主人様。お仕置きは後で。今は結託してこの魔物を倒さないとまずいです」
「だな」
俺はルカとティファニーに視線をやる。その時、そういえばティファニーは謎に裸だったことを思い出し、俺は制服の上着を彼女へ被せる。
「ティファニー。ふざけている場合じゃないからこれを着とけ」
「……あ、ありがとう」
流石のツンデレティファニーも、今の状況がやばいことを察したのか、素直に俺の上着を羽織る。
魔界の帝王エンド・ウタカは何回も戦っているから行動パターンは知り尽くしている。
攻撃パターンはかなり単純だ。
最初の攻撃は、片手でグングニルを振るか、両手で振るかの二択。今回は片手で一振りしたから、次は口から灼熱の獄炎を吐くだろう。
「まずいな」
攻撃パターンは単純だし、次の攻撃も容易に避けることができるだろう。
俺は──。
この場にはカルティエとルカとティファニーがいる。カルティエは好感度が高いため、地獄の帝王の攻撃に耐えられるだろうが、四天王のふたりはどうだ? 班別対抗試験の間だけ仲間だったが、地獄の帝王の攻撃に耐えられるほどのものではない。
このままではルカとティファニーが死んでしまうかもしれない。サポートするにも、そもそも敵だったため、どうサポートして良いのかわからない。
「くっ……」
地獄の帝王が大きく息を吸い込んだ。パターン通りに灼熱の獄炎を吐くのだろう。
「ルカ! ティファニー!」
俺は彼女達を庇う。
今の俺のレベルで庇ったら死んでしまうかもしれない。この世界で死なないように、トゥルーエンドを目指していたが、それよりも目の前で女の子達をみすみす見放すなんてことが俺にはできなかった。
ゴオオオオオオオオオオ──!!
突如、魔界の帝王の足元から雷が放たれる。
『ぐおおおおおお!! おおおおおお──!』
地から天へと一直線に伸びていく雷に貫かれた魔界の帝王はそのまま倒れた。
バタアアアアアアア!
巨体が地面に倒れる地響きが起きたところでようやくと我に返る。
「今のは、ラスボスの地獄の雷……」
ということは。
「お前達、大丈夫か?」
「先生……」
ラスボス先生が血相を変えてやって来てくれた。
「ふむ。無事みたいだな」
俺達に外傷がないことを確認すると安堵の息を吐いてくれた。
「強い波動を感じて来てみたら、すごいことになっているな」
ラスボス先生が倒れている魔界の帝王をジッと見つめる。
『くふっ……我がワンパンで倒されるとは。良かろう。汝へ褒美をくれてやる』
定型文通りに、地獄の帝王がラスボス先生へグングニルをプレゼントした。
「これは……」
ラスボス先生がグングニルを手に取ると、しっくり来るような顔をして握っていた。
ブレイブアンドレアのラスボスはグングニルなんて手にしなかったけど、それを持っているだけで更にラスボス感が増しているな。
「……」
ラスボス先生はジッと魔界の帝王を見つめている。
「試験は中止だ。皆、学園に戻るように」
まぁ魔界の帝王がケープコッドを散歩しているんだから試験どころではないだろうな。色々と調査をする意味でも試験が中止なのはわかるけど。
「使えるな……」
怪しく笑うラスボス先生がめちゃくちゃ怪しいんだけど、なにを企んでいるんだ?
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