第32話 中間管理職は異動しても中間管理職

 俺の股間の高感度が上がったのか、ルカの好感度が上がったのか……。どっちかを確かめるために、ルカと別れたあとも森の魔物を狩っていたんだけど、明らかにレベルが上がっている。


 そりゃもちろん、ルカ固有の三回攻撃ができるツバメの剣を装備しているからそれで強くなったとも言えるんだけども、一撃の威力が上がっているのを実感できる。


 これは新発見だ。四天王の好感度を上げてもレベルが上がるとなると、四天王を攻略してもレベルが上がるということになる。


「お前達。今度は班別対抗試験を行う」


 魔法学園の一年G組の教卓に立つラスボス先生が唐突にそんなことを言い出した。


「ダンジョン実習では各自四人一組を好きに組んでもらったが、今度の班別対抗試験はくじで決めることになる。これは、どんな奴とパーティを組んでも良いようにという訓練の一種だ」


 なるほどね。好きな奴ばかりと仕事をするわけではないという将来性を考えたものか。もしかしたら好きな奴と仕事ができるかもしれないし、嫌いな奴と仕事をしないといけないかもしれない。そうなった時でも、自分の実力を発揮できるようにって感じかね。


 先生の言葉に誰も反論を示さない優秀な生徒達……まぁおそらくはラスボス先生に反抗すると地獄の雷をくらうかもしれないから反論しないだけかもだけども。あの人、普通の学校だったら速攻クビなんだけどね。


「よし、おまえら魔法でこのくじを引け」


 先生の目の前にはイルージョンみたいにくじ引きの箱が浮いていた。それを生徒達は自分の席に座り、魔法を使って引いている。


「先生。魔法が使えない脳筋はどうすれば良いんですか?」


「……勇者のくせに魔法が使えないのに魔法学園に入るから」


「あ、てめ、それ勇者ハラスメントだぞ。ユシャハラ!」


「なにそれ美味しいの?」


「ラスボスのキャラ崩壊が始まっている」


「ふん。魔法も使えない脳筋がっ」


「先生、それ褒め言葉です」


「勘違いするな。褒めているんんだ」


「ツンデレおじさんのデレは欲してません」


「しかし、これは欲しているだろ。さっさと受け取れ」


 そう言って俺の目の前にくじがやって来る。


 ラスボス先生、コンプラアウトだけで完全アウトじゃないよな。完全にアウトならこのまま俺を笑い者にするし……。


 って、いやいや、普段悪い奴がちょっと良い事するとかなり良い奴に見える理論に陥ってしまった。ヤンキーがネコを抱いているとかい、映画版のジャ〇アンがめっちゃ良い奴に見えるとか、その理論。あぶねー。あんなツンデレおじさんに絆されるところだったぜ。


「くじは行き渡ったな。だったらさっさとくじを見ろ」


 先生の合図で俺達はくじを見た。


「10」


 くじには数字が書かれていた。


「よし、同じ数字同士に固まれ」


 そう言うと、ラスボス先生の魔法が発動したのか、自動的に10番の奴等のところへと体が向いた。


 そういえばラスボス先生ったら、ダンジョン実習の時も全員をワープさせてたから、そういった魔法が得意なのかもしれないね。


 とか、そんなことを考える暇もなくなった。


「王子。よろしく」


「はあ!? なんであんた達なんかと組まないといけないわけ!?」


 俺のパーティ、クーデレさんとツンデレさんなんだが。


「フィリップ王子」


 ポンっと俺の肩に手を置くイケメンは黄緑の甲冑を着ていた。


「がんば!!」


「その爽やかで嬉しそうな顔をやめなさいハイネ」


「そんな顔してますー? あははー!!」


 この爽やかイケメン。中間管理職を回避できたからってめっちゃ爽やかな顔をしてやがります。


 そんなハイネのパーティは──。


「は? なんでご主人様と違う班なのですか? 意味不明なんですけど。潰します? もう全てを潰します?」


「こんなパーティではわたくし本来の力が出せないのですが。やはりフィリップ様と一緒ではないといけないと思うので直訴しにいきます」


「同意です、シャネル。行きましょう」


「ほら、ハイネ様も行きますよ」


「……」


 俺はポンっと彼の肩に置いてやる。


「多分、その班の方がしんどいと思うぞ」


「ぐ、ぅぅ……」


 やはり中間管理職から抜け出すことができないハイネであった。

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