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機械生物の急所は基本普通の生物とそう変わらない。


だが大型機械生物は体の大部分が機械のパーツで出来上がってるため、急所は基本二か所しかない。「脳」と「心臓」を両方壊せば少なくとも制御が利かなくなりいずれ活動を停止する。だが逆手にとって言えばそれ以外を攻撃しても基本的に効果は無い。

見た感じクマの「脳」は硬い材質で覆われていて、ライフル一本で貫通できるもんじゃない。おまけに「心臓」は今、中型に胸を串刺しにされて固定はされてはいるものの、クマの方が腕を大きく振るい暴れているから近づく隙も無い。


本来ならこの状況、十中八九撤退を選ぶべきだ。プランも無いまま唐突に始まった戦闘に不可解な行動を取る中型。挙句に相手は強さ、硬さ、知性、全てにおいて高い指数を持つとされるクマの大型だ。


でももしあの中型があの時見たと同じなら―?


このまま中型が動かなければ、勝ち目はある。

賭けるしかない。どのみちニッサの義足はもう限界がきてるから新しい大型を探す余裕も無い。


今までのように全部、勝てばいいだけだ。


最後の一服を一息。思いっきり吸い込んでから踏みつけ、火を消す。ワゴン機械荷車のコントロールパネルを開け、レバーを引くと足場の中央部分が一部開き、中から大砲が現れる。台に砲弾を装填し、自動照準をクマの額に設定し発射装置のボタンを口に咥える。あとはダメ押しの貫通弾をライフルに込めてから構え、狙いを定め照準器でクマの額に赤点を照らす。


後はニッサの合図を待つだけだ。


少し経ってから、ニッサがゆっくりと林冠から逆さま吊りで降りてくる。ちょうどいい高さでぴたりと止まり、こっちを見る。どうやら準備OKなようだ。


にやけそうになる衝動を抑え、俺は発射ボタンを噛み砕く勢いで強く押した。射出の反動でワイヤーに固定されていたワゴンが後ろに大きく引っ張られるように動く。振り下ろされないように体を一緒に揺らし、タイミングよく小さく飛んで砲弾の後を追うように貫通弾を撃ち出した。


強い衝撃音が鳴り響き、クマの動きが止まるとニッサはワイヤーを解除しそのままクマの懐とヤツに刺さった角の隙間に滑り込んでいく。ここからだとよく見えないが、おそらく心臓を覆うワイヤーを切り裂く忙しい作業を始めている。


―だが貫通弾に入っていた電磁パルスの効果が想定より少し弱く、クマは既に声を上げるほど回復している。


ニッサの解体作業に気づいたのか、対抗すべく手足を動かそうとしているが串刺し状態では上手く行かずに動けないままでいた。まだ想定の範囲内だが、ダメ押しのダメ押しをした方がよさそうだ。


揺れ動くワゴンに踏み場を作り、再度クマの頭に照準を合わせる。ゆっくりと息を吸い、いつものように普通に狙い、撃つ。高圧力で射出した特殊なハイブリッド弾はクマの頭蓋に当たると花のように開き、鋭い刃が駒のように回転し始める。砲弾と貫通弾で摩耗した頭蓋の金属は遂に削れ、特殊弾はそのままクマの電子脳に侵入し内部を荒らして行く。


流石に絶命の危機を感じたのかクマは咆哮を上げてさっきよりも激しく暴れだすが、もうこれ以上俺に出来ることは無い。あとはニッサが心臓を潰すことを信じて待つだけだ。


ゴーグル付け直し、クマの胸部付近にいるニッサを探すと切れたワイヤーの渦で動く何かが見える。そのまま少し待っているとクマの動きが止まり、目の光が消えると力なく横に倒れていく。その重さに耐えられず、もう一体の機械生物もつられて倒れこむ。角が深く刺さりすぎているのか、ダメージを負いすぎたのか、こちらも動く気配が無い。


熊の胸元に咲き開くワイヤーの海から這いつくばるようにニッサが出てくる。その無事を確認してからワゴンを地上に下ろし、合流しに行く。

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