デルルク樹海域
リッターニアを離れ、デルルク樹海を彷徨うこと八時間。
日もすっかり暮れ、森の木々は機械的な光を発し俺らの進む道を薄暗く照らす。
静かな風の音とワゴン《機械荷車》の規則正しく軋む音が眠気を誘う。
この辺りには人里も無く、延々と不気味な森の中を進む。
そんな森の中を意味無く適当に移動しているわけではない。
目先の地面には一メートルほどの窪みが左右交互に一つずつ等間隔に並んでいる。タイプは捕捉するまで分からないがその足跡は間違いなく巨大機械生物が通った証。
もちろんこの暗闇の中、目で直接視認して追っているわけではない。これは本来機械生物を避けるためのワゴンの危険検知・予測機能を逆手に利用して追跡機能として使っている。それ以外にも移動や荷物の保管を担ってくれるワゴンは本当に便利な代物だ。
ターゲットの補足を待つ俺たちはワゴンの上で戦う準備をする。まるで数年前のあの日のように…。
朝にニッサが街で買ってきた弾薬と手榴弾は一見適当に色々選んだように見えるが、ちゃんと大型機械生物とやりあうための特殊なものが必要な分だけ入っていた。
殆どはもう整理して収納してあるが、最後の腰に下げる弾帯だけは手で弾を入れなければならないため、片腕しかない俺には効率よく詰めることが出来ず毎回この作業に手間取ってしまう。
予備の弾帯に弾を詰めながらゆったり時間が過ぎていく―
と思いきや静かな地鳴りが聞こえた気がした。ワゴンの機械的な音よりもはるかに低い響き。
隣を見るとさっきまで横で呑気にお菓子を食べていたニッサの姿が既に無く、ワゴンも移動を停止していた。
頭に載せたゴーグルを下げ、暗視センサーを起動させると視界に映ったのは大きめの物体。道をふさぐほどの大きさ…ビンゴだ。
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