No.2 冒険者試験②

 九年前、親父が俺に言った。


「いいか、ルカ。冒険者にとって一番大切なのは魔力だ」


 と。


 魔力があれば基本、どんな魔法も使えるようになれる。

 まあ、努力も必要だけど。

 

「魔力を制する者は勝負に制すってことだ」


 だから俺は毎日、魔力を使い果たす日々を過ごすことにした。

 魔力が尽きれば、人は気絶するため、毎日の睡眠は魔力切れによるものだった。

 結果、俺は魔力の尽きない、無限の魔力を得たのだ。


「な、なんて子……この年で魔力水晶を粉砕するほどの魔力を持つだなんて……」


 周りもざわつき出した。

  

 すると、俺の元に一人の白髪の老人がやってきた。

 老人の右目には傷がついており、塞がっていた。


「ほほっ、凄まじい魔力を感じると思ったら、魔力水晶を壊してしまうとは」


 老人はニコニコと俺に近づいてきて、ん? 、と何やら疑問を浮かべた。


「あいつに似とるのお、お主もしや」


 あっ、誰かと思ったらこの人、冒険者協会の冒険者会長だ。

 カミズ=ゴッド。

 このおっさんの名前だ。


「ルザの息子か?」

「お、親父を知ってるのか!?」


 ルザ。

 その名前は俺の親父の名前だ。


「やはり、そうか。少し、場所を変えようか」


 カミズに連れてこられたのは、会場内、誰もいない個室だった。


「カミズさん、俺、これから第二試験があるんですけど」

「まあまあ、第二試験まではまだ時間があるしいいじゃろ?」

「ま、まあ……」


 確かに時間はある。

 

「ありがとう。流石があいつの息子じゃのう。魔力量がえげつないわい。お前の親父さんもお前と同じくらいの時に冒険者試験を受けたのう」

「親父は俺と同じくらいの時、どのくらい強かったの?」

「ん? まあ、一目で普通の人間ではないってレベルには強かったのう」


 カミズは下髭を触りながら、ニコッと歯を見せた。


「が、ワシ的にはお前さんの方が可能性を感じる」

「え?」

「冒険者としてのじゃ、一目見ただけで、そう思ったのう」


 よっしゃああ。

 今の俺は、昔の親父より強いのか!!


 嬉しすぎて、ニヤニヤし出すと、カミズが口を開いた。


「お前はなぜ冒険者になる?」

「んなのよー」


 俺は笑顔で言った。


「親父を越すためだッ!!」


 俺の言葉に一瞬、ポカン、と口を開け呆気に取られるカミズ。

 すぐに、ゲラゲラと笑いだし、


「ほほほ、それは面白いのう」

「お、俺は本気だぞ」

「本気なことくらいその目を見ればわかるわい。なれるのか、親父を越す冒険者に」

「なれる、つーかなる!! 絶対になってみせる」


 そのためにもこの試験を合格すんだ。


「いい意気込みじゃ。期待しておるぞ」

「おう!! あっ、俺の名前はルカだ、覚えておいてくれよおっさん」

「ああ、覚えておこう」



 カミズと別れ、俺は第二試験を受けるために教室へやってきた。


 8000〜8100……。


 ここか!!


 教室の中に入るや否や、一瞬にして空気感の違いで全身に鳥肌が立った。

 

 ゾワゾワ、と全身が震える。


 緊張だ。

 

 やっべ、周りの緊張が空気をこんなにしてるんだ。

 飲まれないようにしなきゃ。


 緊張に飲まれてしまっては、100%の実力を発揮できない。


 て言っても、心臓が飛び出るくらいにうるさいな。


 ギュッと、両手に拳を作って自分の受験番号の書かれた席に座った。


 ふう、第二試験は一体なんだろう。


 しばらくすると、試験官がみんなの前に現れた。


「うし、みんな集まったなー。それじゃ、今から第二試験を行う」


 百人中、大体五十人ほどが第一試験に合格したようだ。


「第二試験は、人数が半分、今は四十八人だから、二十四人になるまで走ってもらおうか」


 なんて鬼畜な試験なんだ!!









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努力好きな天才冒険者、無限の魔力で無双する さい @Sai31

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