第5話 エピローグ
二人の研究員が噂話をしていた。
「おい聞いたか? あの失敗作にアシモフリミッターつけるんだってよ」
「あれってホムルンクスに付けられるのか?」
「それ用の開発に成功したらしいぜ」
「なんだ、じゃああのイカれた研究者は無駄死にって事か?」
「まぁ、そうなるな」
「嫌だねぇ、必死にやってきた結果無駄死にとか」
「殺されるよりはマシかもよ」
「どういう事だ?」
「あの計画はどうもキナ臭くてな、最初の殺人も仕組まれてたって噂はあるんだよ」
「なんだそれ?」
「考えても見ろよ、裁判所に出された映像って誰が撮ってたんだ?」
「そりゃあ研究所だろ?」
「じゃあ、なぜ死ぬまで放置されてたんだ? 普通警報なりなんなり入って止めるだろ?」
「あ……おいおいこんな話しをして大丈夫か?」
「ここは大丈夫だろう」
「でも、その理屈だといかれた研究者もここの研究所が始末したんじゃ無いのか?」
「それがなぁ、そうでも無いみたいでな、あの男の私室には何も無かったらしいんだ」
「何も?」
「あぁ、まるで殺されるのを知っていたのか、わざとに殺されたのか、全部処分されていたんだってよ」
「最後まで分から無い奴だな」
「そうだな」
ー処置室ー
「これからアシモフリミッターを取り付けます。 その胸元のペンダントを外してください」
「取れないの」
「そんなバカな……くそ、本当に取れない! アーティファクトの呪いか! あの男も余計なものを残していきやがって!
仕方がない、それは取らないで良いからアシモフリミッターの処置を始める!
良いね?」
「……はい」
アシモフリミッターは元々はAI型のロボットに搭載される為に作られた安全装置だ。
古いSF作家が提唱したロボット三原則。
一 人間を傷つけてはならない。
ニ 一に反しない限り人の命令に従わなくてはならない。
三 一、ニに反しない限り自身を守らなくてはならない。
これを強要する装置である。
ー翌日ー
「ねぇ本当に大丈夫なの?」
『我輩はアーティファクトの権能も手に入れておるのだよ、大船に乗った気持ちでいたまえ』
「でも、アシモフリミッターって凄いんでしょ?」
『そんな紛い物のアーティファクトなぞ、どうとでもなる!』
「私、今日の夜から政府高官も相手だそうよ」
『ふむ、コショウをこの血管を模した部分の窪みに入れて置いてくれないかな』
「良いけどどうするの?」
『男はな、自分のモノを口に咥えさせたがるのだよ』
ー高官の私室ー
「やっとだ! お前を手に入れるのにどれだけ苦労したか分かるか? 分からないだろうな! これから思う存分楽しませてもらうぞ!」
翌日の新聞ではこういう記事が載った。
内閣府特命担当大臣(ダンジョン対策担当) 吉馬 繁光氏 緊急入院。
身体の一部を切断する大怪我をして緊急入院した。
「ホムンクルスがクシャミをするなんて聞いてない」との言葉から、今後ホムンクルスはクシャミをしない研究が行われるという憶測が生まれている。
ーダンジョン内ー
「ダンジョン特班員ってなに?」
『ダンジョンの中で死んでもらう為に最下層まで降りろという上の意向を具現化した役職だな』
「ふーん、私死んじゃうの?」
『我輩が付いているのに?』
「ふふ、自信マンマンね」
『大船に乗った気持ちでいたまえ! そうだ! 君にも名前があった方が良いな!
私の名前を君にあげよう、ミサキと名乗るのはどうだね?』
「うん! 私の名前はミサキ! ダンジョン特班員ミサキって名乗るわ!」
そう言いながら目の前のオーガを一撃で倒す。
「博士お願いして良い?」
『ふむ……権能の無駄使いにしか思えんのだが』
そう言いながら、心臓のアーティファクトは倒れてるモンスターと一体化する。
顔を粉砕されたオーガがおもむろに起き上がった。
『これで良いか?』
「うん、じゃあ、ギュッてして」
『うむ、まぁ、それでミサキが良いなら良いのだが』
首から上の無いオーガが小さな少女と抱き合う。
知らない人が見たらこれを抱擁だとは思わないだろう。
「好き! だーい好き!」
『奇遇だな、吾輩も同じ事考えていたよ』
【後書き】
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品はカクヨムコン参加作品です。
カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。
長編も書いているので良ければ見てください!
https://kakuyomu.jp/works/16818093081579462826
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よろしくお願いします。
殺人人形と欠陥研究者の歪な愛情表現 山親爺大将 @yamaoyajitaisho
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