第2話 訴訟

 家族が納得がいかないと訴訟を起こした。


 その為、監視カメラの映像と音声が法廷に提出される事になった。


 ー公開映像及び録音音声よりー


 ハンマーで何かを叩いてる男の後ろ姿が映し出された。

 その側にはもう一人男がいた。

 少し離れた所から撮っているようで全体像が見える。


 手術台のようなものに乗っている男女、そばで見ている男。

 そういう構図だ。


 台にいる男の陰に隠れてよく見えないが、華奢な身体が見え隠れしていた。


「この! この! これでも壊れないのか! はぁはぁ! どいつもこいつも俺をバカにしやがって!

 知ってるんだぞ!女房は不倫してる事を! 娘は俺の子じゃない事を!

 世間体があるから知らないフリをしてるだけなのに!

 それなのに、あんな目で見やがって!

 クソッ! クソッ! 死ね! 死んでしまえ!」


 そう叫びながらハンマーで何かを殴り続ける。


「どうだ! 悔しいか? 悔しかったら抵抗してみろ!」

「私には悔しいという感情はありません」

 女の子が状況に似つかわしくない冷静な返答をした。

 その男に組しだかれたものが、若い女性のような声で答えた。


「つまらない回答だな! やり返すくらいの事してみろよ」

「了解しました」

 いきなり手を振り回すと、男を吹き飛ばす。


 そこには全裸で佇む、ショートの青い髪とグレーの瞳の少女が映っていた。


「貴方は私を素手で276回殴りました」

 そう言うと素手で、その男の腹や顔を同じ数だけ殴りつける。


「ゴフッ、バカ! やめ……ガハッ!」


「貴方は私を381回足蹴にしました」

 倒れている男を同じ数だけ踏みつける。


「コヒュー、コヒュー」


 女は奥に転がっていた折れた金属バットを持って来た。

「貴方は私をこのバットで72回叩きました」

 既に虫の息の男を同じ数だけ叩いた。


「そして、貴方はこのハンマーで私を176回殴りました」

 画面上からでも分かる程の血飛沫が飛ぶ。


 女の子がニヤリと笑った。


「俺は何もしてないぞ! してないじゃないか! おい! やめろ、やめてくれぇぇ」


 ここで映像が切れた。


 死んだ研究者の家族は訴訟を取り下げた。


 ミサキを使った研究は、担当研究員が決まらないまま半年が過ぎることとなった。


 ー半年後ー

「なぁ、聞いたか? ミサキの研究再開するらしいぞ」

 研究員たちが噂話で盛り上がっていた。

「えー、二人も殺しておいてよくまだ研究続けるな」


「お偉いさんがな、どうしてもアレを使いたいんだと」

「外見か?」

「外見だな」


 ホムンクルスは様々な遺伝子を組み合わせる為に見た目や性別は、現段階では完全にランダムである。

 もちろん、外見も調整出来るように研究は行われているが、成果は未だ出ていない。


 なので、ミサキと同じ外見のモノをもう一度作るのは不可能に近い。


「でも、なんであんなに皆んな嫌がるんだ? 俺だったら技術さえあれば喜んで受けるけどな」

「あの事件でな、自我に目覚めたんだよ……悪い方向でな」


「悪い方向?」

「嫌なことがあったら暴力で解決すれば良いと思ってるらしいぞ」


「なんだそりゃ、昔のヤンキー漫画かなんかか?」

「そんな生優しいもんじゃないぞ、死亡事故こそ起こってないが、結構な数の怪我人出たみたいだぞ。

 それも、腕引きちぎられたとかそういう話らしいぞ」


「うわ、よくそんなの再開するよな」

「上の圧力があるからな」


「圧力あったって、やる奴いなければ出来ないだろう」

「開発者呼び戻すらしいぞ」


「呼び戻すって、あのサイコパスマッドサイエンティストを?」

「ああ、呼び戻す方も呼び戻す方だが、それに応じるアイツも頭おかしいよな」


「成果全部取られて、ここ追い出されたんだろ?」

「でもまぁ、殺人人形とイカれた研究者、案外お似合いかもな」


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 長編も書いているので良ければ見てください!

 https://kakuyomu.jp/works/16818093081579462826


 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

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