第14話:すい星学園の地下、星の石のほこら

 ステラと別れた僕は、それでも星の石探しは続けようと思った。

 それがこの星を救うことでもあるし、ステラを救うことでもあるから。

 ステラが言うように確かに短い付き合いかもしれない。でも僕はこの星を、なによりもステラのことを救ってあげたいと心から思っていた。

 夢の中で見た顔、あの顔の少女を助けたいと思ったのがここにきた理由なんだから。

 ろうかを図書室に向けて歩く。ステラは最初から方向的には、図書室と資料室だろうと言っていたけど確かにこっち側には、それくらいしか星の石が隠れそうな場所がない。

 あとはろうかに教室が並ぶだけ。教室なんかにあったら騒ぎになるか、トラウムの知るところになるだろうから。

 僕は教室が続く景色を見て、自分の学校と似てるなと思っていた。というか、この感じをなんども思った記憶があった。

 似ているというか似すぎていないだろうか? 学校ってみんな本当にこんな?

 気のせいだろうか。でも、僕には何かそこに意味があるように思えてならなかった。

 

 教室側の風景にあきた僕は、右側の窓の外を眺めながら歩くことにした。

 窓の外には、きれいな花壇や石畳の道があって、きっと昼休みにはこの外に散歩に出たり、お弁当を食べたりする生徒もいるんだろうなと思った。

 そんなときにふと目に入ったものが、なぜか気になった。

 それが目に入ったのは本当にたまたま。ちょっとした違和感。

 それは、小さな石の塔のような、お墓のような。石でできた何かだった。

 僕の学校にも、もう少し大きい記念碑的なものはあった。

 でも、それはもっとわかりやすいところに飾ってあったし、人の通るところにかざってあったと思う。

 でも、これは周りの景色とあまりなじんでいない。むしろ生け垣に隠されていると言ってもいいくらいだった。

 なんだか、とても気になった僕は、外に出る方法を探した。

 当たり前だけど、ろうかにはそんな場所は無くて、正門まで走って外に出る。

「たぶん多分あの辺だったと思うんだけど……」

 ろうかの景色が変わり映えしないから、目印が無くてなかなかみつからない。

 キョロキョロしながら探したら、生け垣に咲いていた花に見覚えがあって足を止める。

 そこにさっきの石のかたまりがあった。

 大きめの正方形の石の上に、筒のような石のかたまりを乗せたような単純なデザインで、筒のような柱のような石には、たくさんの文字がきざんであった。

 もちろんまったく読めない。

 全体的にかなりボロボロになっていて、相当の年月を感じさせた。

 社会学習で行った、古いお寺の建物を思い出す。

「ひょっとしてこれが……」

 僕は、その直感にしたがって、星石コンパスを起動させる。

 強い光があった。

 赤の石、緑の石、青の石、黄色の石、全ての石が光っている。

 そして、白の石はこれまでで一番強く光っていた。もちろん下半分が。

「ここの下だ……。星の石はここにあるんだ!」

 ステラがいないのが悔やまれる。

 どうしようか、ステラを呼んでこようか。そう思って振り返りかけた。

「ここを見つけましたか」

 その声の主はトラウムだった。

「トラウム……?」どうしてここに。

「さすがですね。星太くん。あなたならここを見つけると思っていました」

「トラウムはここを知っていたの? これはなに?」

「そうですね。これははるか昔のこの星の始まりのなごり。『心のほこら』です。この星の心が、そしてすい星学園がはじまった場所です」

「星の始まりの場所……?」

「はい、学園は星の姫の力でできたと言ったでしょう? その最初がここ。なぜならここが最初の意志が生まれた場所であり、星の石が最初にあった場所なのです。言ってみればここが私の生まれ故郷なのですよ」

「じゃあ、最初からトラウムはこの場所を知っていたんだ」

「ええ、もちろん。星の石の仕組みも、そしてありかも」

 トラウムは落ち着いていた。それが僕には腹が立った。

「なら、なんで僕らに探させたりしたのさ! 最初から星の石の場所を教えてくれれば、こんな苦労もしなくてよかったし、すい星の危機はもっと早く終わったのに」

 トラウムにつかみかかる勢いで怒りをぶつけた。

 これまでの努力は、そしてステラの悲しみは何だったのか。それがつらかった。

「星の石を見つけても解決しないからです」

「……え?」

「私は二人に頼みました。星の石を見つけてほしい、そして原因を探してほしいと」

 確かにそうだった。僕はトラウムからそう言われていた。

「星の石に頼んでも、この事件は解決しないのです。本当に解決すべきは原因の方だから。そしてこの事件は解決できません」

「どういうこと? それが、ステラと話せと言われたことにつながるの?」

「ええ、原因はステラにあるからです。そのため、星太くんとステラを組ませました。違う星の二人がお互い話すことで、そこから原因の方をこそ解決してほしいと」

「僕はまだわかっていないよ、ぜんぜん。ステラともけんか中だし」

 トラウムは心のほこらをしばらくながめていた。

「そうですか、では今日はステラがここにいなくて幸いだったかもしれませんね」

「どういうこと?」

「まだ、ステラはまだここに来てはいけないと言うことです」

「どうしたらいいの? 時間も無いんでしょ?」

「今日は時間も遅い、ここを見つけたことで今日は十分です。明日の授業を聞いて、そしてよく考えて、ステラと話してみてください」

 まったくわからなかった。だから、ただうなづくしかなかった。

 なんとしても僕はステラともう一度話をしよう。そしてまた仲直りしよう。


 僕はいまいちすっきりしない気分のまま、自分の星に帰った。

 明日が大事な一日になる。そんな予感がしていた。

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