第13話:学園の地下を探そう
「さあ、時間はありませんよ。早く行きましょう」
「うん、待たせてごめん。ちょっとトラウムから話を聞いていて」
「なんの話ですか?」
「えっと……、まあいろいろ、授業の話とか」
うまい言い方が思いつかなくて、いいかげんなごまかし方になってしまった。
ステラはあやしんだだろうけど、何も言わないでいてくれた。
「まずは一階に行きましょう。方角的には図書室側のはずなので、学園の右棟でコンパスを使っていくことにしましょう」
「うん、何度かは使えると思うから。今日こそはヒントをみつけてみせるよ」
僕らは、階段を降りて学園校舎の右側の棟に向かう。
場所が地下で場所の心当たりがないってなると、そもそもありそうな場所はどこになるのかって話になって範囲がすごーく広がる。
あと何回僕の力が使えるかわからないけど、ろうかの途中でもコンパスを使って少しずつ確認しないと。
階段から少し歩いて、右の棟のろうか入り口にたどりつく。
「まずはここで反応を見ましょうか」
「そうだね」
星石コンパスを起動する。
職員室とは向いている方向が違うからだろう。光っている石は12時の赤と9時の青の石だった。白い光は相変わらず強く、ここより下にあることは明らかなようだ。
「一階まできても白の石が光るということは、やはりこの学園には地下があるということのようですね。にわかには信じられませんが」
「さっき言ったみたいに埋まってるってことは?」
「白の光の強さ的にないでしょう。埋まっている程度なら白い石は全部光るかと思います。下半分だけと言うことは、もっと下の高さにあると言うことでしょう」
「なるほどそれもそうか。じゃあ、場所の当たりだけでもつけたいね」
「そうしましょう。ろうかを進みながら、時折使う感じで行きます。今の星太さんの力なら、星の石が近づいた方が、光が強くなると思います」
「わかった、頑張ってみるね」
廊下を歩く間も、相変わらず二人の間にはろくな会話がない。
しばらく進んだところで、立ち止まる。右棟の入り口から図書室までの道の三分の一ってところ。
もう一度、星石コンパスを起動するが、あまり光の状況は変わらなかった。
だけど、白い石じゃ無くて周りの石の光が強くなったような気がする。少し近づいていると言うことだろうか。昨日は細かく使わなかったわからなかったけど、やっぱり図書室側に何かあるのは間違いなさそうだ。
「もう少し進んでみましょう」
ステラの言葉に僕はうなづいて歩き出す。でも、会話が無いことに僕が少しだけ耐えられなくなってきた。聞きたいことは山ほどあったから。
「……ねえ、ステラ」
「なんですか?」
「僕、ステラのこと怒らせてるよね」
その言葉に、ステラがキッと僕を強い目で見た。
「いえ、ただ星を越えてわかり合うのは無理なのだとわかっただけです」
「無理ってどういうこと? 僕は昨日までステラと話せてとても楽しかったんだ。もっとステラと話をしたいよ」
「正直なところ、私も少し楽しんでいました。でも勘違いでした。基本的なところが私たちは違っているのですから」
ステラの言葉は僕を拒否していた。
「なんで? 僕、悲しいよ。別の星にやってきて、せっかく友達になれそうだって思ったのに。ひょっとして僕の授業での言葉が原因なの?」
ステラが足を止めた。何か考えているのか言葉はない。
しばらくして、ため息をついて口を開いた。
「星太さん、あなたはこう言いました。『この星はすてきな星だ』と。それはあなたが青い星のような恵まれた星に住んでいるから、言える言葉です。ごまかしです。あなたはこの星を自分の星よりも下に見ながら、その場で受けるためだけにあんなことを言いました。それがこの星にずっと住んでいる私には許せないのです」
「ごまかしだなんて、そんなことないよ!」
僕は思わず大声を出してしまった。そんなことを言われるなんて思ってもいなかった。
傷つけるような言葉を言ってしまって、それで怒っているならわかる。
でも、僕の本気の言葉をうそだなんて言われてがまんできなかった。
「僕は、この星が本当にすてきだと思ったから、ああ言ったんだよ。それはちかって本当。ごまかしだとか下に見ているなんて、そんなこと言われたくない!」
「では、この星のどこがすてきだというのですか! 青い星と比べものにならない小さな星で、人も街も文化も少なく、ほこれるほどの特徴も無い。そんな星がなぜすてきだと言えるのですか!」
ステラがはじめて、叫ぶような大声を出している。怒っていた。
何かの感情が爆発したように、心の底から叫んでいた。
「外の世界を知らない、他の民はいいでしょう。しかし、私はトラウムからそして代々の星の姫から知識を継いでいます。青い星のことも知っているのですよ。ここよりもはるかにすてきな場所です。できるなら、そしてこんな役目が無ければ、トラウムに頼んで、青い星に移住していることでしょう」
いろいろと不満がたまっていたのだろう。言葉が止まらない。
「こんな星の石の力が無ければ、維持もできなければ先にも進めないような星に何の意味があるというのですか!」
そこまで言うと、ステラがくちびるをかんで黙ってしまった。
いいたいことを思わず漏らしてしまったけど、それを恥ずかしく思っているのだろう。
でも、それはステラの本音で、心の中にたまっていたそんな思いだったのだろう。
僕はそんなステラを見て、夢での表情の意味が少しわかった気がしていた。
だからあえてこんなことを聞いた。
「ステラは、この星が好きじゃないの?」
「ええ、その通りです! 星の姫がこんなことを言うのはもはや役目失格ですね。でも。私はこの星のことが嫌いです。正直この星が落ちることに少しだけ、ほんの少しだけ納得してしまった自分がいるのですよ。ああ、いつかはそうなるだろうなと」
その言葉は、しぼりだすような声でつむがれた。
でも、僕はステラの心の中に違うものが見えたと思っていた。単なる直感だけど、ここまで見てきたステラを考えると、たぶん間違ってない。
「ステラはそんなこと思ってないよ。それこそごまかしだと思う。だって、ステラはそんな子じゃないもの」
「短い付き合いのあなたに、いったい何がわかるというのですか!!」
ステラは、僕に背を向けると来た道を走るような速さで戻っていった。
一人残された。
僕にはようやくトラウムが言っていた意味がわかっていた。
だって、星の石を見つけてもステラが願わないとだめなんだから。
ステラがこの星を救おうって思っていないのなら、きっとかなえられないんだ。
このすい星の危機を救うためには、ステラの気持ちがきっと重要なんだ。
でも、それは本当に僕にできることなのだろうか……。
だって、僕はステラの言うように会ってから、ほんの数日でしかないんだもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます