Day28 ヘッドフォン
ヘッドフォンは私の必需品。どんな時でも外さない。家でも、電車でも、親戚同士の集まりでも。
『こっちにおいでよ』『無視しないで』『一緒に遊ぼう』
こうしていないと、すぐに周囲で蠢く幽霊達の声で頭がおかしくなってしまう。同じおかしくなるなら、好きな音楽を爆音で聴いて、耳がおかしくなる方がマシだ。幼い頃からの、何の自慢にもならない特技。ただ邪魔で、うるさいだけの。
「誰の曲聴いてるの?」
「……たぶん、兄さんにはわかんないよ。音楽番組とかにも出てこないような、マイナーな歌手だし……」
「良い曲だったら調べるよ」
兄は優しい。……兄、と呼んでいるのは私だけだけど。彼は私の従兄弟。私が四六時中音楽を聴いていても、怒ったり取り上げたりしない。音楽の趣味は違うけど、私の好きな曲も一緒に聴いてくれる。
私が世界で一番好きな人。だけど、それ以上先には行けない――行けるわけない。だから、私は音楽を聴く。この恋心を、幽霊の放つ雑音と共に掻き消しながら。
『ちゃんと伝えてみなよ』『昔は従兄弟同士の結婚とか珍しくなかったよ〜』『まずはお互いによく話し合わなきゃ』
……最近、雑音の内容が少しプライベート寄りになった気がするのは、気のせいだろうか。
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