Day27 鉱物

 友人の父はゴーレムを造る職人で、息子である彼もまた、身体の何割かはゴーレムなのだという。

「ゴーレム製造技術と錬金術は近い所にあって、親父は独学でその辺の技術を混ぜ合わせて実験して、で、オレが生まれたってわけ」

「へぇ〜〜」

 彼は全く普通の人間に見える。でも、プールや温泉には絶対に入らない。日焼けしない生白い肌の下に、薄らと青銅色の模様が浮かぶから、それをジロジロ見られるのが嫌だという。

「センス良いタトゥーみたいでかっけぇのにな」

「お前のセンス、終わってるよ」

 下校後はよくうちでつるむ。僕はスマホを片手にポップコーンをつまむ。彼はぼんやりと鉱物をつまむ。鉱物が好物……ってコト? とふざけたら、まあまあ痛いチョップをくらった。

「今度山梨に遊びに行こうぜ。腹いっぱい水晶食ってさぁ」

 彼はギリギリまで家に帰らない。母がいない彼は、父が黙々と研究をしているだけの自宅の空気が嫌なのだという。

 きっと彼は、自分の父を憎んでいる。いつか、なにか恐ろしいことが起きるんじゃないかと、そう考えると不安になる。

「お前は、何食べるの」

「ほうとう」

 白い刃のように鋭い歯で、ベスブ石を噛み砕きながら、彼は小さく笑った。

「にんじんも、旨いらしいよ」

 神様。どうかこのままでいさせてください。何も悲しいことも辛いことも起こさないでください。

 そのまま遠くに逃げてしまって、誰も知らない鉱山に、一緒に消えてしまえたらいいのに。

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