Day25 カラカラ

 風車かざぐるまがカラカラと風に鳴る。その丘には幾つもの風車が、色とりどりの花のように立っていた。誰が刺したのか、いつからそうなのか、知る人は殆どいない。ずっと昔からそうだったのだという。

「子を早くに亡くした親が、その魂を慰める為に、風車を飾ったのが始まりだという説もある」

 丘を案内してくれながら、先輩は言った。晴天と緑の美しい原、数々の風車のコントラストが美しい。でも、だからこそ。

「どうして、撮影禁止なんですか? こんなに綺麗なのに」

「いや、まあ、撮ってもいいけど」

「本当ですか!」

 でもさ、いいの? 奇妙な疑問符をぶつけられて、私は立ち止まる。

「何がですか?」

「聞こえないの?」

 きょとんとして、首を傾げる。立ち止まった私たちの間を風が通り抜けて、風車がカラカラと鳴る――カラカラ、カラカラ――幾重にも連なるそれは、子供達の笑い声にも似ていて。

「――止めておきます、すいませんでした」

「いや、別にいいんだけどね、俺は」

 ただ、責任は取れないってだけで。先輩の声はあくまで平熱で、それが余計に、背中をゾワゾワとさせた。

 風車は回り続ける。カラカラ、カラカラ。さざなみのように、歌うように。

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