Day23 ストロー

「あたし、赤いストローがいい」「うちは黄色!」「私は青」

 了解、と短く返事をしながら、注文されたレモネードを作る。たっぷりの蜂蜜で漬けた自然派レモン味、当店オリジナル。

「ねぇマスター、聞いてよ」

 ジョッキにストローを三本刺して、少女達は口々に言う。外は真夏日、店内は快適。ジョッキの表面だけが、汗をかいている。

「あたし達って、こんな体じゃん」「頭は三つ、性格もバラバラ」「なのに体は一つ。ホントに不便」「でさ、あたしは工学系行きたいわけよ」「うちは美術」「私は理系」「いや、進路もバラバラなのかーいって」「マジ最悪」「無理すぎる」

 喋って、飲んで、机を叩き、舌を出す。三つの頭が三つの表情を見せる。レモネードは、彼女達が三人とも好きな味。

「で、どうするんだ。いよいよ体、ぶった切るのか」

「まだだし」「死んだら困るじゃん」「死ぬ程になったらやるけどさ」

 一瞬の沈黙を挟んで、少女達が並んでジュースを飲む音がする。悩んでいる時、困った時、彼女らのリズムは一定になる。

「……いつもと同じ」「三人で、ちゃんと悩むよ」「引き裂かれそうなくらい辛いけど」「でも、きっと決められる」「また、髪引っ張りあって、大喧嘩するかもだけど」「工学で美術で理系な道、見つけられるから。……多分」

 グラスを磨く手を止めて、そうか、と短く返事をする。

「苦しい時は、いつでもおいで」

 ニカッ、と三つの笑顔が弾けた。

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