Day17 半年
半年もあれば血も入れ替わり、多くの細胞も刷新され、新しい肉体に変化する。君と出会い、共に過ごした半年は、俺を新しい俺へと生まれ変わらせた。
「ご覧ください、春の花が咲きました。長い長い雪の季節が、ようやく終わりを告げるのですね」
心からの喜びを込めて君は微笑む。俺は洞窟の内側から、溢れる雪解け水を、微かに光る黄色の花を見る。
「貴方、もう大丈夫ですよ。貴方の住む村へ、ようやく、帰ることができますね」
殆ど涙ぐんでいるかのような潤んだ瞳で、君は言う。
あの、前も見えないような雪嵐の日、俺はこの洞窟の中へと引き摺り込まれた。雪に棲まう怪異の噂を思い出し、ここまでかと死を覚悟した。しかし、待っていたのは、心優しき君と過ごした天国のような半年。この深い雪が溶けるまで、それまでどうか命を繋いでくれと、懇願された半年もの時間。
俺はとっくに変わってしまった。こんなに春を憎んだことなどなかった。
眩しそうに外を見つめる君の背に、ゆっくりと近づく。引き摺り込んでやろう、あの時と反対に。怪異は、俺の方だったのだ。
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