Day16 窓越しの

 コンコン、と丸窓を叩かれる。振り向いた瞬間、狙い澄ましたようにひょっこりと現れる顔。暗闇に浮かぶ、場違いな程に明るい笑顔。

 実際場違いだ。ここは宇宙船。他の船員達はコールドスリープ中で、起きて活動しているのは僕一人だけ。

 地球を遠く離れすぎたから、こんな幻覚を見ているのだろうか。作業が終われば退屈だからと、SF映画を観すぎたからか。顔はあどけない子供の顔だ。大きさは、宇宙を観測するための丸窓よりも遥かに巨大。大きな丸い瞳に見つめられると、まるで籠に入れられた虫のような気持ちになる。

 いや、実際そうなのだろうか。我々こそが宙を彷徨う虫けらで、楽しげに観測されているだけなのだろうか。

 ガラスにそっと手のひらをつける。大きな指先が、窓越しに重なる。宇宙船が僅かに揺れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る