Day12 チョコミント

『――人間――人間よ。喜びなさい』

 急に、体が金縛りに遭ったように動けなくなった。仕事終わりの金曜日、いわゆる華金。まずはビールか、いやハイボールも捨て難い……等と考えていた矢先だった。

『このワタクシがお前の体を使って差し上げます。全くこの上位存在たるワタクシに選ばれるなんて、貴方は本当に幸運ですよ』

 何を言っているのか完全に意味不明だが、実際何となく視界は金粉をまぶしたかのように無駄にキラキラしてるし、全く自由は効かないしで、何者かに乗っ取られてしまったことは間違いないらしい。なんという災難! あれよあれよと言う間に、俺の体はずんずん進む。こいつ、どこへ行く気だ?

「夏季限定スーパーチョコミントパフェ一つ。はい、一人でいけます」

 一人でいけます、じゃねぇんだよ。程なくして、天を衝く程に巨大なパフェが現れた。目が眩む程に鮮やかなグリーン、凶暴なチョコのタワー!

「う〜ん、天界のみんなにも自慢しましょう」

 この上位存在、意外と映えを気にするタイプらしい。

「さて、頂きます。中の人もせいぜいお楽しみ下さい」

 中の人って俺のことか? 勝手にやりたい放題……ウッ、確かに意外と美味い。このスッキリとしたミントの風味が、甘さ控えめのブラウニーとハーモニーを奏でて…!

「意外と食レポいけるタイプです?」

 う、うるさい!

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