Day09 ぱちぱち

 ぱちぱち、ぱちぱち。暖炉の中で火花が爆ぜる音を聞きながら、裸足を放り出していた。暖かな空気が頬を染める。雪遊びから帰ってきたばかりの冷えた体に、原始的な熱と光が柔らかく寄り添う。

 濡れた靴下をそのままにしないでよ、と怒る母の声に、はぁいと答え立ち上がろうとした。その視界に、火の中をちろりと走る赤い影が見えた。

 それはトカゲだった。紛うことこもなく、トカゲだった。呆気に取られていると、火の中のトカゲは緋色の体をスルスルと暖炉の隙間に滑り込ませて、姿を消してしまった。

 それから毎年冬が来る度に、あの日のことを懐かしく思い出す。両親と過ごした暖かな日々、やがて結婚し新たな家族を迎え、そして子供が産まれて――暖炉の側でゆりかごを揺すっていると、赤子が暖炉の火をじっと見つめた。

 この子にも見えたのだろうか? あの不思議な妖精、冬の日の精霊が。

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