Day09 ぱちぱち
ぱちぱち、ぱちぱち。暖炉の中で火花が爆ぜる音を聞きながら、裸足を放り出していた。暖かな空気が頬を染める。雪遊びから帰ってきたばかりの冷えた体に、原始的な熱と光が柔らかく寄り添う。
濡れた靴下をそのままにしないでよ、と怒る母の声に、はぁいと答え立ち上がろうとした。その視界に、火の中をちろりと走る赤い影が見えた。
それはトカゲだった。紛うことこもなく、トカゲだった。呆気に取られていると、火の中のトカゲは緋色の体をスルスルと暖炉の隙間に滑り込ませて、姿を消してしまった。
それから毎年冬が来る度に、あの日のことを懐かしく思い出す。両親と過ごした暖かな日々、やがて結婚し新たな家族を迎え、そして子供が産まれて――暖炉の側でゆりかごを揺すっていると、赤子が暖炉の火をじっと見つめた。
この子にも見えたのだろうか? あの不思議な妖精、冬の日の精霊が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます