Day02 喫茶店

 コーラフロート、アイスはチョコ。鉛色のピックを刺して。

 そう注文すると、無口なマスターに目配せされて、店の奥のカーテンを潜らされる。薬臭い煙の膜を潜ると、そこは裏喫茶。人外のもの達が憩う場所。点々と座る影の輪郭がぼやけて見えるのは、何も煙のせいだけではないだろう。

 といっても、いるのは別に人外ばかりではない。俺みたいな普通のヒトもいる。辛気臭い色のコーラフロートを片手に、いつもの席に座る。そしてタバコを吸い、渦巻く煙の層を厚くする。

 談笑する影。角のある頭、揺れる尻尾。笑うたびに震える翼、時には伸びる首だって――確かに俺は普通のヒトだが、こんな場所でしか安らぎを感じられないのだから、『向こう』に片足突っ込んでいるのかもしれないな。

 カラン、と殆ど口をつけていないコーラフロートの氷が鳴いた。

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