ヒトと人外 ~近くて遠い隣人~

鳥ヰヤキ

Day01 夕涼み

「吸血鬼が外出ていいの?」

 まだこんなに明るいのに。そう問うと、それまで微動だにせず瞑目していた男が、大義そうに目を開けた。

「黄昏時は平気だ」

「そういうもんなんだ」

 よくわかんねーや、と青年は隣に座る。吸血鬼は、軽く睨むように青年を横目で見たが、彼がアイスの袋をバリバリと開けている姿に、思わず天を仰いだ。

「欲しかった?」

「いらん」

 涼やかな夕風が二人の間を駆けていく。棒アイスを咥えた青年の着古したシャツ、赤い眼をした吸血鬼の骨董品じみた黒マント。その並びはいかにも滑稽だったが、黄昏に染まる縁側を他に見る者もない。

「当たりだったら、キミにもあげるよ」

「いらんと言っている」

 しばらくの間、アイスを齧るシャリシャリという音だけが、暮れゆく空に漂っていた。

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