第2話 特別なあなたへ

《sideカンナ》


 私は魔物がずっと怖かった。


 だけど、お父さんとお母さんを殺した魔物が許せなくて、強くなりたくて冒険者になった。


 だけど、魔物を見るたびに体が固まって、周りの冒険者たちに迷惑ばかりかけてしまっていた。


 せっかく冒険者になれたのに、こんな調子じゃダメだって、いつも自分を責めていた。


 でも、旅をしているあの人、サイトさんと出会って私は人生が変わっていく。


 最初に会ったとき、サイトさんはどこか頼りなさそうな雰囲気だったけど、私の悩みを真剣に聞いてくれました。


 不思議な雰囲気をした人で、貴族様のような丁寧な口調と、優しく柔らかい微笑み。誰も私を誘わなくなって、一人で怯える冒険者なんて誰もいらないですよね


 だけど、その日、私を冒険に誘ってくれました。


 旅人だと言われていたので、私のことを知らないと思って説明もしました。


 こんな凄い人だなんて、その時は気づかなかったんです……本当に感謝しかありません。


「催眠術」っていう言葉は初めて聞いたけど、あの五円玉を見つめているうちに、心がどんどん軽くなっていって……気づいたら、私は不思議な感覚を覚えました。


 それは両親を殺されたのに魔物に対して、怯える自分の心に対して怒りを感じる自分がいたのです。


 気持ちが奮い立って、サイトさんを置き去りにして、私は魔物に挑みました。


 不思議なほどに私は魔物に怯えることなく、しかも今まで怖いと思っていながらもなんとか魔物を倒せないかと観察していたことが、相手の弱点を見抜くことにつながって、私を魔物を大量に討伐することに成功しました。


 ギルドの人たちは、私の成果に対して驚いていたけど、私自身が一番驚いています。

 

 今まで怖くて動けなかったのに、魔物の弱点がすぐに分かって、あっという間に倒せたんだもの。


 これ、全部サイトさんのおかげですよね? 


 彼の催眠術で、私は自分の弱点を克服できて、最強の冒険者になったです。


「そうね。きっとそれは支援職の方なのでしょうね。催眠というスキルを聞いたことはないけど、人の弱さを克服させることで強くするなんて凄いわね」

「ハイ! サイトさんはとても凄い人なんです!」


 サイトさんはただの支援職じゃない。彼は私の心の中まで見通せる、特別な力を持ってるんだって気づいたんです。


 だって、私の心の弱さを一瞬で見抜いて、そしてそれを消し去ってくれたんだから! 彼こそ、私を変えてくれた初めての男性です。


 この想い尊敬と自分の想いを聞いて叶えてくれた人。


 これは全てをサイトさんに捧げても良いと思えるほどの私にとって大事なことでした。これまで両親の仇を打てず、そして私自身の弱さを克服させてくれたのです。


「ずっと抱えていた。魔物を倒すという夢を叶えることができました。本当に嬉しい。これからは誰よりも多く魔物を殺戮してやります!」


 ふふ、本当に嬉しい。どうしてでしょうか? サイトさんの顔を思い出すだけで顔が熱くなります。ううっ、思い返すだけで恥ずかしいです。


 サイトさんは本当に素敵な人。あの柔らかな声で耳元で話しかけられたいです。


「まあまあ、そんなに自分を責めることないって」


 なんて言ってくれた時、胸がドキッとしました。こんな優しくて包み込むような言葉、初めてです! もっとサイトさんの声が聞きたい。


 それに、五円玉を振る仕草……あの冷静な表情で、全てを見透かしている感じ……もう、すごく頼もしいのです! 


 きっとサイトさんは、ただの冒険者じゃなくて、どこかの伝説的な存在なんじゃないでしょうか? いや、そうに違いありません。


 彼がこれまで素性を隠してきたのは、きっと何か大きな理由があるんだと思います。


 私を選んでくれたこと、運命ですよね。


 他の誰でもなく、私の弱さを知って、それを変える力を与えてくれたのはサイトさんだけなんです。


 もっと私に特別な目を向けて欲しい。


 彼の力は、他の冒険者たちには絶対できないことをしてくれたのです。


 サイトさんが特別な存在で、私だけがそれを知っているのですね。


 ……もしかして、私のこと、少しでも気にかけてくれてるのかな? そうだったらいいな。もう私の全てをサイトさんに捧げてもいい。


 それほどのお礼をしたいと私の心は熱くなっているんですから。


 まずは、私はもっと強くならなくちゃ。


 きっと、大いなる使命をもったサイトさんのために、彼の役に立てるように、私も彼を助けられる存在になりたい。


 サイトさんが私に力をくれたように、私も彼に返したいの。だって、サイトさんに恩返ししないと失礼だもの。


 ふふ、サイトさん。サイトさん。サイトさん。


 いつかサイトさんが本当の姿を見せてくれた時、私は彼の隣に立っていたい。


 強くて頼りになる彼女として! 今日も彼に会いに行こう。サイトさん、きっとまた私に新しい力を与えてくれる……きっと、そうだよね?


 ああ、サイトさん、本当に凄い人だ……。


 どこまでもついていきますね。あなたのことからもう目が離せません!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る