第5話 ハイエルフのシスター
帝国で冒険者として身分証を手に入れた俺は一つのところにとどまることなく、異世界の旅を続けていた。
ベッ、別に王国から追ってが来て怖いとか思っているわけじゃないからね。
そして、俺はとある静かな村に辿り着いた。
この村には美しい教会があり、エルフたちが住んでいる村なのだ。
エルフと言えば、森を守る精霊というイメージだが、帝国に吸収されたことで人権が認められて、森と村を守っている存在になっていた。
ただ、そこは森の精霊であり、森の神様を信仰する宗教の中心地として知られている。
教会の前を通りかかると、物憂げな美しい女性が一人、祈りを捧げていた。
彼女の姿を見た瞬間、俺は思わず立ち止まった。
長い銀色の髪に、透き通るような白い肌。彼女はシスターの衣装に身を包んでいたが、その美しさは隠しきれない。俺の心は一瞬で打たれてしまった。
「……え、ちょっと、ヤバくないか? あれ、俺の好みドストライクじゃん……エルフ女性の中でも飛び抜けて美人じゃねぇか?」
あまりにも美しすぎて、心の声がダダ漏れになってしまう。
「どうにか声をかけられないかな?」
俺は声をかけるタイミングを探していた。すると、彼女は静かに祈りを終えると、深いため息をついた。そんな姿を見たら、つい声をかけたくなってしまう。
「こんにちは、シスターさん。何かお悩みですか?」
彼女は驚いたように俺を見つめたが、すぐに微笑んだ。
「旅のお方ですか? ご親切にありがとうございます……ですが、こんな私にお話しするようなことは……」
その声は優しいが、どこか悲しげだった。俺はもう少しだけ踏み込んでみることにした。
「もしよければ、俺でよければ話を聞きますよ。悩みを誰かに話すだけでも、楽になることもありますし」
そう言うと、彼女はためらいながらも、目を伏せて静かに話し始めた。
「ふふ、お優しいのですね」
「ああ、俺は冒険者のサイトっていいます」
「私の名前はリリアです。ハイエルフ族で、今はシスターとして、この教会で信仰を守っております……。ですが、最近はずっと、結婚について考えさせられているのです」
彼女の口から出た「結婚」の言葉に、俺は少し不思議な想いを抱いた。
「シスターなのに、結婚ですか……?」
「ええ、私は信仰に従い、男性と結婚するまで肉体的な関係を持たないという信条を守っています。それは当然のことだと思ってきました……。ですが、そのために多くの男性に敬遠され、誰も私に近づかなくなってしまったのです。皆さん信仰を大切にする私は結婚などしないと思われてしまったようで」
リリアは顔を伏せたまま、続けた。
「周りの人たちからも『あの人は結婚なんて望んでいない』言われるようになりました」
どこが思い詰めたような顔をするリリア。
だけど、こんなにも綺麗なのに結婚できないこともあるんだな。
「私のことを行き遅れだとか、行ってきてあいつらは!」
うん。雲行きが怪しくなってきた。
「はっ?! すみません。始めてお会いした人に、つい口が過ぎました」
「いえ、あなたのような美しい方の悩みを聞けるなんて、旅をしていてよかったですよ」
どこの世界にも結婚って女性の悩みなんだな。俺はまだ若いから考えてしないけど、ハイエルフってことは長寿で、かなりの年齢を重ねているんだろうな。
見た目には、十代の綺麗なお姉さんにしか見えないけど、寂しい思いをずっとしてきたのかな?
情報を整理すると、彼女は信仰に忠実であり、貞操概念が固いが故に、周囲から敬遠されていたということだ。しかし、見た目は本当に美しいし、俺にとってはドストライクだ。
これは催眠で、上手くすればワンチャンあるんじゃないか? ちょっとカンナに手を出すのは気が引けるけど、エルフとの一夜のワンナイトならアリかも。
そして、彼女も一度男に体を許した方が、そのあとは心が淫らに乱れてしまうんじゃないか?
「リリアさん……」
少し考えた後、俺は自信満々に言葉を紡いだ。
「あなたの悩みを解決する方法があるかもしれません。俺は冒険者でスキル催眠を使えるんです」
「催眠?」
「はい、あなたの深層心理に語りかけて、少し心を軽くしてあげることができるかもしれません。試してみませんか?」
「心を軽く……?」
リリアは不安そうに眉を寄せたが、俺の真剣な表情を見て、しばらく考えた後、静かに頷いた。
「もしそれで……少しでも心が楽になるなら……お願いできますか?」
「もちろんです。リラックスして、俺を信じてください」
俺はいつもの五円玉を取り出し、彼女の前で糸に通して振り始めた。リリアは興味深げにそれを見つめている。
「ゆっくりと5円玉の動きを追いかけてください」
「ハイ」
「あなたはだんだん……リラックスしていきます……心が軽くなり、体も解放されます。つまり、あなたは男性を受け入れることに貞操概念が解き放たれるのです。むしろ、周囲の期待や、周囲の視線が気になりません……そして、自分に自信が持てるようになるのです……」
リリアの目は次第にとろんとした。
彼女はゆっくりと深呼吸を繰り返しながら、催眠の深みに落ちていく。俺は少しずつ彼女の心に触れながら、彼女の緊張と不安を取り除いていく。
「リリアさん……あなたは、自分をもっと自由にしていいんです……貞操概念は大事ですが、それに縛られることはない……あなたはもっと自分らしく、生きていいんです……」
その瞬間、リリアの表情が穏やかに変わっていった。
「私は……もっと自由に……」
彼女は呟き、目を閉じたまま、まるで心の重荷がすべて消えたかのようだった。
「はい。目覚めましょう」
「これで大丈夫……なのですか?」
そう言った瞬間、リリアが俺の腕にしがみついてきた。
「ありがとう、サイトさん……あなたがいてくれて……本当に……良かったです……」
「えっ……あ、いや、ちょっと待って急にどうしました?」
リリアの目は、催眠が解けていない状態で俺を見つめている。彼女の目は、どこか不安定な光を放っていた。
しまった、催眠が予想以上に深く入りすぎたか?
「あなたがいれば、私……もう怖くない……結婚なんて……どうでもいい……」
リリアの言葉に、俺は冷や汗を流しながら状況を見守った。
これはまずい。完全に何か入ってはいけない領域に踏み込んだ。
「サイトさん……あなたがいれば、私は……それでいいんです」
「ま、待ってください! 俺はただの相談に乗ろうと思っただけです……あなたは大勢の人から求められる人です!」
もう一度、催眠を解くように指を鳴らすと、リリアさんは意識を失った。
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