第28話




早くに母親を病で亡くし、二人暮らしの父親は私が邪魔なようだった。



常にいないものとして扱われ、家にも殆どいない。



今の世の中には珍しく、纏まった収入はあるようだが母の墓を作ることもしなかった。



母親の顔すらまともに覚えておらず、父親に対しても特に思うことはなかった。興味が無いのは、私も同じだ。



物心ついた時から感じていたことだが、私は人より感情が乏しいのかもしれない。



一時期は短所のようにも感じていたが、今にして思えばそうでもなければ生きていられなかったのかもしれない。



ーーそして、珍しく父親が帰って来ていた日に、それは起こった。



深夜、部屋で寝ているとやけに玄関が騒がしく目を覚ましたのだ。



声の正体が複数の男のものであることと、何かを壊すような音に、反射的にベットの下に身を潜めた。



そして、暫くして強盗と思わしき男達が私の部屋へと入ってくる。



‥‥変わり果てた姿の父を連れて。



幸いなことに早く気付いて移動したこともあり、布団から体温が消えていて怪しまれることもなかった。



それから三日ほど、男達は家に居座り続けた。



私は必死に息を潜めながら、父親が腐敗していく様子を強盗達がいなくなるまで目の前で見続けていた。

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