第27話

最愛の恋人というほどの相手を殺す理由。



対象が能力者と聞いただけで、ある程度の予想はついた。





「ジャンヌダルクは能具使いだと聞いたので、不快にさせてしまったらすみません」


『‥‥いいえ』


「その言葉を聞けて安心しました。やはり、あなたにしか頼めない」


『‥‥』


「私は彼に恨みがあるわけでも、死を望んでいるわけでもありません」


『‥‥』


「彼がどれほどの〝罪〟を犯したとしても共に背負い、共に滅びる覚悟はあります」


『‥‥』


「彼となら、地獄だろうがどこだろうが死ぬまで付き添う所存です」


『そこまで断言できるのなら、何故依頼を』


「彼は、ーー日向ひなたは、胸が苦しくなるくらいに優しい人なんです」


『‥‥』


「数少ない自分の食べ物を、名も知らない貧しい子供に与えるようなお人好しなんです」


『‥‥』


「そんな彼だからこそ、一刻も早く殺して欲しいんです。能力者殺しのような、私利私欲で惨殺されることは私が耐えられません」


『‥‥』


「救世主と謳われるあなたになら、彼を殺されても仕方ないと割り切ることが出来ます」


『‥‥私は、救世主などではありません』


「それでも、世間からすればあなたは救世主です」


『‥‥』


「悪意に満ちた死神の鎌ではなく、幾度なく悪を捌いてきた聖剣で」


『‥‥』


「‥‥ただの自己満足だと理解しています。あなたが実際に善人であるかどうかは関係ありません。私はただ、彼に少しでも報いてあげたいのです」


『‥‥』


「‥‥結局、何もしてあげられなかったから‥‥」


『‥‥』


「話が逸れてしまいましたね。申し訳ございません。依頼遂行の為、事の経緯をご説明致します。少し、長い話になりますがお付き合い願います」

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