第26話
「一つ、確認してもいいでしょうか」
『構いません』
「あなたは、〝能力者殺し〟ですか?」
〝能力者殺し〟
噂は聞いている。
惨殺が趣味で、人の生き血を啜る灰色の髪の双剣使いの化け物だと。
その正体は人狼か、或いは吸血鬼かと、所謂都市伝説のような扱いをされているようで大して気にも留めていながったが。
『〝能力者殺し〟ではありませんが、能力者を殺したことはあります』
「‥‥そう、ですか」
『何故そんな質問を?』
周囲を念入りに確認すると、胸に手を当てて自身を落ち着かせるように息を吐く。
「ーー彼は、能力者なんです」
〝能力者〟
または〝被験者〟とも呼ばれる存在。
その実態は、かつて〝主〟によって大規模に行われた〝人体強化計画〟ーーつまり〝人体実験〟の被害者だ。
しかし、人智を超えた力を持ちながらも〝能力者〟とは差別用語として使われることが多い。
〝成り損ない〟なんて呼ばれ方もあるくらいだ。
能力が不完全すぎる上に、力に対して対価が大きすぎるのだ。
超人的な力を得るというよりも、あくまで生まれ持った人間の身体能力を人為的な力で底上げしているに過ぎない。
一例としてこんな話がある。
ある者は千里眼を手に入れたもの二度目の使用で失明し、ある者は一度だけ記憶を消す能力を持ち得たが、消した相手の記憶を自分に移すだけという致命的欠陥を持ち、ある者は炎を自由自在に扱う力を一瞬だけ得たが、能力の行使後炎が体に燃え移って焼け死んだという。
そもそも、能力を行使する前に自滅する者の方が多い。何故なら、大抵の者は力を投与された時点で人格崩壊を起こした後錯乱してショック死するからだ。
仮に生き残ったとしても、待っているのは生き地獄でしかない。
能力者を製造していた研究所は全て破壊され実験は凍結されだが、当時生き残った能力者は今も存在する。
その利用価値は、莫大だ。
壊れるまで戦闘兵器として使うもよし、能力者の生き血を定期的に吸収させることで、人智を超えた力を道具に宿して行使できる〝能具〟の糧としても使えるという優れものだ。
今の世の中では、そんな能力者を欲しがる組織も少なくない。
能力者を然るべき機関に引き渡すだけで、一生裕福に暮らせるだけの報酬が貰えるということもあり、懸賞金目当てで狙う者も少なくはない。
〝能力者狩り〟という、能力者を捕まえる専門の組織もあるという。
つまり、能力者は能力だけが危険視されるのではなく、関われば関係者として被害を被るかもしれないという恐れから厄介がられる存在でもあるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます