第22話




「可哀想に」




男は少女が出て行った扉を見ながら、口元に手を当てて意地悪くクスクスと笑う。






「あの言い分だと、君はまるで路上に転がっている石ころも同然だね」


「‥‥うるさいな」




背後の少年の苦虫を噛み潰したようなぼやきに、肩を上下に揺らす。





「いい加減独り立ちしないと、完全に見捨てられるのは時間の問題だよ」


「そんなこと、分かってるし」


「へぇ、そんな風には見えないけど?」


「おれは別に、ジャンヌに見返りを求めているわけじゃない」


「なら、普通そんな顔しないでしょ」


「‥‥チッ。それより、ジャンヌが顔を見られたってどういうこと?」


「ああ、聞こえてた?安心しなよ、確信がないから聞いたんだし」


「嘘つけ。あれは脅迫だよ」


「脅迫?人聞が悪いこと言わないでほしいな」


「不本意にもお前みたいな性悪のクソ野郎の側にいれば、心が読めなくてもそのくらい分かるんだよ」


「仮にそれが事実だったら何だっていうの?君如きに何が出来る?石ころの癖にさぁ」


「仕事を増やせ。可能な限り」


「‥‥」


「理由は、分かんだろ」


「いいよ。ちょうど暇を持て余していたところだし、無様に足掻く君の醜態でも余興くらいにはなるだろうしね」

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