第23話




「おかりなさ〜い!カナセさんっ!」




忠犬の如く、部屋の入り口でタオルを持って出迎える紫紺の瞳の青年の姿に大きな溜息を吐く。





「‥‥いつから」


「気配がしたので!」


「‥‥」


「雨酷かったでしょう?雨も滴るカナセさんもいいですが、風邪を引かれるわけにもいかないので」


「‥‥」


「ていうか、何かありましたか?いつもは右足から入ってくるのに、今日は左足ですね。もしかして利き足変えました?」

  



何故勝手に部屋に入っているのかと追い出したいところではあるが、生憎と男は天敵と対面したこともあり頭痛に苛まれていた。



青年の無垢な瞳とあの忌々しい男の髪色が重なることもあり、今は存在そのものを無視することを決めタオルを受け取って風呂場へと進む。






「勿論、お風呂はバッチリ準備してますからね!」




数週間前より一回り小さくなった体でえへんと胸を張る青年に対して、男は全くの無反応だった。



それでも青年に気にした様子がないことから、元々返答には期待していなかったことが見て取れる。

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