第19話
「こめんね、あまりにも突っかかってくるから鬱陶しくてさ。託児所代わりにぶち込んじゃった。まあ、ルツくん拾ってきたのは君なんだし分かってくれるよね」
「‥‥この子は、闇を恐れる」
「いつの話をしてるのさ。暗闇なんてとっくに克服してるよ。僕ら裏家業の人間は夜こそが活動時間なのに、そんなトラウマも克服できないようだったら仕事なんて出来ないよ」
「‥‥」
「あれからもう2年も経つんだ。身長だってそれなりに伸びたくらいだし」
「‥‥身長?」
ソファーに寝かせながら確認するが、身長に変化があったようには感じない。
「‥‥へぇ」
含み笑いするヨルに引っ掛かりを覚えないわけではないが、他人を不快にさせることを生業としているような男だからと追求はしなかった。
情報屋黒猫のアジトであるこの建物は、一見何の変哲もないバーの跡地だ。
昔は不定期ながらも営業していたらしいが、今はただの名残りで偶に訪ねてくる情報屋の客人にもて成しとして利用する程度らしい。
ヨルが手回しをしているようで、一度も客人とやらと鉢合わせになったことはなかった。
「そうだ、忘れないうちに渡しておくよ」
ヨルの用意してくれた味のしない軽食をとり終えると、故障していたネモフィラのイヤーカフを差し出される。
見かけによらず細工が得意なヨルの手作りで、超小型の通信機と発信機が組み込まれており、この有無で依頼の効率が格段に変わる。
「何、じっと見て。僕の顔なんて今更珍しくもないでしょ」
「どうして」
「うん?」
「どうして、私の居場所が分かったの?」
発信機もなく位置が特定出来ないのに、助太刀に入るタイミングが良すぎる。
「僕こそ聞きたいな、どうしてあんな何の利益にもならない依頼を、雇い主である僕を介さずに勝手に引き受けたのか」
「‥‥」
「2週間に一度は必ずアジトに戻って睡眠を取るって約束を破った困った部下を迎えに行くのは、雇い主としては当然な義務だと思うけどね」
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