第15話




「いやー、怖かったな。あの様子だと、存在を勘づかれたのはルツくんだけじゃないね。意識のない人間の気配すら察知するなんて相変わらず化け物じみてる」


「怖いなんて人間らしい感情持ち合わせていないくせに、何言ってんだよ」



仏頂面の、翠と紫のオットアイの紅顔の美少年が、わざと音を立てて重いドアを開け放つと、開口一番に悪態を吐いた。



首に掛けたヘッドフォンを外しながら、うざったそうに僅かに乱れた亜麻色の髪をはらう。






「やあ、ルツくん。外の空気は美味しかったかい?」


「おれを追い出した張本人がそれを言うか」


「これでも気を遣ってあげたんだよ?まあ、この場合は君じゃなくてあの子にだけど」


「また訳わかんないことをゴチャゴチャと。それよりジャンヌは?帰ってきてるんでしょ」


「地下室で寝ているよ」


「‥‥アレ、飲ませたわけ?」


「あの子はあの薬がないと眠れないから」


「丸三日夢も見ずに眠り続けるなんて、人体に無害なんだろうな」


「まさか、でもジャンヌちゃんになら問題の内にも入らないよ。ーーあの子は、〝特別〟だからね」


「‥‥」


「あ、待ってよルツくん」


「‥‥何」



用事が済めばすぐに去ろうとするところがどこかの誰かに似ているとほくそ笑む。

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