第14話
要するに、これ以上詮索するなら脳以外の部分を破壊するという脅しだ。
敢えて回りくどい言い方をするのは、本気で実行するつもりがないことをこちらが理解している上で釘を刺すためだろう。
「君の言い分は尤もだけど、まあ許してくれよ。これが情報屋としての僕の性分なんだ。めぼしい情報があるのにそれを易々と見過ごしては、僕にはこの〝器〟を繋ぎ止めるだけの価値もなくなるよ?」
「‥‥」
「でも、生まれてしまったからには死に際くらいは選びたいからね。君への詮索はこのくらいにしておくよ」
「‥‥お前。自分がまともな死に方ができるとでも思っているのか」
「まさか、だから敢えて〝死に方〟と言ったんだよ。出来ることなら、死に方くらいは自分で決めたいかな〜って。とはいっても、特別執着があるわけでもないから安心してね」
「‥‥」
「欲を言えば、可愛い女の子に膝枕されながら安らかな眠りにつくっていうのが理想だったりするんだけど。君はどう思う?」
「‥‥心底どうでもいい話だ」
話が脱線すると同時に、用済みだと言わんばかりに踵を返す男。
「ーー無駄足にさせたお詫びも込めて、一つだけ伝えておくよ。尤も、ただの噂にしかすぎないけどね」
だが、男に足を止める様子はない。
「〝ジャンヌダルクの正体は、年端もいかない少女である〟」
わざわざこんな所まで足を踏み入れた割には、特に反応らしい反応は見せなかった。
それはそうだろう。
なにせこの男は、ジャンヌダルクの正体を知っているのだから。
「僕が情報を売らなかった理由が分かったかい?」
「‥‥馬鹿げた話だ」
「僕もそう思うよ」
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