第13話

「今でも覚えているよ。君との初見を。〝人を探す方法を教えろ〟だなんて、この仕事に携わって初の依頼だったからね」


「‥‥」


「対象を知られたくないのか、教えられない理由があるのか知らないけれど、実に興味深いものだったよ」




張り詰めた空気が、外部から遮断された空間に漂う。



空気さえ震わすほどの威圧感を醸し出す男だ。常人であれば安易に臆すだろう。



戦闘中ですら一切の気配や殺気を感知させないことで有名な男が、確かな〝怒り〟を露わにしている。



そんな危機的状況であるというのに、楽しげに笑う男はもはや狂人としか言いようがないだろう。







「あれ、もしかして怒っちゃった?ごめんごめん、つい気になっちゃってさ〜」




この男が感情を露わにすることは極めて珍しい。



珍しいからこそ、価値がある。



隙を見せない男の唯一の〝地雷〟とでもいうべきか。








「ーー人としての器さえも捨てたいのならそう言え。ただの記憶媒体の代用品でしかないその脳さえ無事なら幾ら他の箇所が破損しても問題ないだろう?」


「‥‥」


「近場に一人、居場所までは探れないがもう一人いるな。今更人員を増やして何を企んでいるのか知らないが、まさか同じ過ちをもう一度繰り返すつもりじゃないだろうな」


「‥‥」


「身の程を弁えろ、黒猫風情が」

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