第11話
◇
来客を告げる鈴が鳴る。
音も気配も無く入って来た人物に、目を三日月型にして笑う。
「やあ、久しぶりだね」
「‥‥」
「呼んでくれたら、僕の方から会いに行ったのに」
いつの間にか雨が降り出したようで、夜闇の中から現れた長身の男がフードを脱ぎ、濡れた金色の髪を鬱陶しそうにはらった。
「雨宿りのついでだ」
素っ気なく呟いた男の態度は相変わらずだった。
「名も無き集団ーー、いや〝DEMISE〟の幹部である君の頼みとあれば、例え雨の中風の中、地球の裏側だろうとすぐに駆けつけるのに」
「‥‥」
「それなりに長い付き合いだっていうのに、相変わらずだね、君は」
やれやれとおちゃらけたように首を左右に振るが、腕を組んで扉に背を預けた男は全くの無反応だった。
どことなく獅子を想起させるような端正な風貌に、影のある雰囲気。
少し目にかかり気味な前髪から覗いた空色の瞳は、透き通ったガラス玉のような美しさを持ちその全貌が見えないことを惜しむ者も少なくはない。
気品と才能を兼ね備えた佇まいは、貴公子然としている。
「御託はいい。お前と無駄話をする気ない」
冷たく突き放すような物言いに自然と口角が上がる。
容姿だけならどこの貴族のような男ではあるが、口を開けば悪態しか付かないのがいただけない。
親の仇の如く嫌われているせいでもあるだろうが、こうも会話をぶった切られては話にならないというのに。
来客者は一体どちらなのかと問いただしたいところではあるが、相手が相手だけに大人しく引き下がるしかないのだ。
それに、邪険に扱われるようなったのには自分に非があると認めていた。
出会った当初、興味本位でいつもの如く色々とけしかけたのが全ての元凶なのだから。
それが情報屋故の性分だから仕方がないと言えばそれまでだが、後に男が大出世することを見抜けなかったのは己の未熟さだろう。
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