エピローグ
「入学式頑張ってきて!」
「入学式なんだから、堂々と自己紹介してこいよ!」
両親は元気よく言った。
俺は頷きながら、家の扉を開けた。
……入学式で自己紹介ってどういうことだよ。
高校と勘違いしているのか?
今日、4月7日は山楽大学の入学式がある。
異世界での約一年の時を経て、入学の日を迎えた。
俺は入試を受けてないし、合格もしてない。が、大学に行けるらしい。
神がなんとかしたのだろう。
住宅側の道には満開に咲いたサクラが並んでいる。
サクラを見ると気持ちが高まる。
なんだか食べたくなってきた。
俺はサクラの花びらを一つちぎり、口に入れた。
……美味い。
さすがサクラだ。
「誠也!」
後ろから声が聞こえてきた。
振り向くと、俺のところへ走ってくる桜の姿を確認できた。
「桜!」
一瞬で目を奪う綺麗な瞳。
サラサラでサクラの香りがする黒髪で、ボブヘアー。
前髪をサクラのヘアピンでとめている。
小学生の頃の姿に戻っている。
もちろん、身長と体重と胸の大きさは伸びている。
……やはり、桜は世界一可愛い。
「せっかくだし、一緒に行こうよ」
俺は桜の言うことに頷き、大学の方へ向かった。
「入学式まで時間あるかな?」
「まだ四時間あるよ」
「大学まで何時間だっけ?」
「三時間だよ」
「ならさ、少しあのベンチに座らない?」
リリースは指を差した。
指を指した先は、いつもカップルがイチャイチャしているベンチだった。
エロい雰囲気が出てきた瞬間、熱いキスを交わすところだな。
「いいよ」
ベンチに座った。
ここのベンチは横幅が狭いため、二人で座るとギチギチになる。
これがエロい雰囲気を出す要素になっているのだろう。
「なんだか恥ずかしい……」
早速エロい雰囲気が出ている。
これは……キスができるということだな。
俺の夢が叶うぜ。
もう気持ちが抑えられない。さぁ、今すぐ
「さぁ、キスをしようではない
「誠也がずっとお守りを持ってるの嬉しいよ」
エロい雰囲気になっているのに、キスを提案しないだと……
まぁ、まだキスは早かったか。
キスはさらに雰囲気が高まってからだな。
「あのお守りって作るのに30時間もかけたんだよね。
棒人間書いただけじゃん、って思うかもしれないけどね」
棒人間を普通に見るとそう思う。が、棒人間の細部まで見るとそう思わない。
「普通ならあんなお守りはすぐに捨てると思うけどね」
「あのお守りには思いが詰まっている。だから、捨てるなんてあり得ない」
「ありがとう」
リリースは嬉しそうな表情をした。
このお守りは墓場まで持っていく。
……そろそろキスしてもいいんじゃない?
「さぁ、キスをしようではない
「今の私は棒人間とは比べものにならない絵が描けるからね」
「桜って絵描くの好きだったの?」
「好きだよ。
……そういえば、誠也には言ってなかったね」
そうだったのか。
……もしかして、桜の夢って絵を描くこと?
桜が目指した山楽大学は美術部があるもんな。
「夢って絵を描くことなの?」
「そうだよ」
「それなら、美術系大学に行ったらよかったんじゃ?」
「……誠也と同じ大学に行きたいなって思っててさ。さすがに誠也が美術系大学に行くのは無理だと思ったから、美術部がある中で一番近い大学にしたんだ」
桜は俺にそんなに好意を持っていたのか。
なら、キスするしかないな!
「さぁ、キスをしようではない
「大学卒業したら、もっと上手い誠也を描くからね」
「ありがとう」
超嬉しい。
絶対にその絵も墓場まで持っていく。
「誠也は私のこと大好き?」
「もちろんだよ」
「中学の頃のお嬢様みたいだった私のことじゃないよね?」
中学の頃は素じゃなくてわざとだったのか。
「もちろんだよ。ありのままの桜が大好き」
「……ありがとう」
桜は俺を抱き、キスをしてきた。
俺もそれを返すように桜を抱き、キスを迎えた。
今までに見たことないほどの頬の赤さ。
驚くほど柔らかい唇の感触。
少しだけする甘い果実の味。
……やっと
一生続けたい。
――――
「ありがとう」
「こちらこそありがとう」
涙が溢れ出しそうだ。
「……ごめん。入学式に間に合わないかも」
「え?」
「入学式まで残り二時間だから」
五分しか経っていないと思ったら、二時間も経っていたのか。
「とりあえず、急ごうか」
俺らは走った。
――――
「ギリギリ着いたね」
入学式まで残り三分だ。
間に合ってよかった。
「大学生活楽しみだね!」
「そうだね」
「これから誠也と遊びやデートや、最終的には……」
桜は頬を赤らめた。
「やりたいこと、全部しような」
「うん!」
桜は満面な笑みを浮かべた。
「なら、早速手を繋ぎたいな」
桜は手を出してきた。
俺はその手を繋いだ。
そして、大学に入った。
ついに最高の生活が幕を開ける。
大学生活楽しむぞ!
幼馴染の夢を叶えるべし〜転生したので叶えられません。仕方ないので、異世界での生活を頑張ります〜 院手蔵瑠 @inte_guraru
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