第30話.再会
神との出会いを求めて約六ヶ月が経った。
つまり、転生してから一年経ったということか。
俺らは神がいるらしき山が見える町に着いた。
「多分、この町が最後だと思うよ」
「ついに神と出会えるってこと?」
「そうだね」
ついにか……
「リリース夢も叶えられそうだね」
「うん……」
リリースは暗い表情をした。
「どうしたの?」
「いや、気にする必要はないよ」
「リリース、教えな」
俺とリリースの会話にセウスが入ってきた。
「いや、それは……」
「教えな」
「……私、嘘ついてたんだよね」
嘘か。
なんのこと?
「やっぱりそうだったんだ……」
セウスは同情した。
俺だけ理解できていないんだね。
置いてけぼりしないでくれ。
「ごめんね。二人とも」
「謝る必要はないよ。なんとなく想像はできてたから」
こちらこそごめん。何の話をしているのか理解できなくて。
「でも、なんで嘘をついたんだ?」
「『パパと会いたい』って言った方が賛同させやすいかなって思ったから」
「そんなことないよ。好きな人と会いたいって言っても賛同してたから」
パパ、好きな人……神に叶えてもらう夢の話か。
リリースはパパと会いたいから神と出会いに行ったが実は嘘で、本当は好きな人と会いたかったということか。
……なんでセウスはリリースの夢を知ってたんだ?
リリースもこのことは話さないと思うが……
まぁ、酒が入って話したのかもしれない。
俺だって酒が入って、セウスに好きな人の話をしたからな。
「二人ともありがとう。なら、最後も頑張ろうね」
「うん」
……俺は賛同するなんて言ってないぞ。
まぁ、言わなくてもリリースの夢なら賛同はするけどな。
――――
最後の町からも旅立った。
なぜだろうか。感動が襲いかかってくる。
まだゴールはしてないのだから、感動はお預けだぞ。
「ねえ、あそこに何かない?」
リリースは指を差した。
指を差した方向を見ると、衣服らしきものが確認できた。
なぜか既視感がある衣服だ。
なんでだ……あ、そういうことか。
あれは巨大スライムと戦闘する前まで着ていた衣服だ。
でも、あの衣服は溶かされたはずだが……
「これ、前着てた服じゃん! でも、溶かされたよね」
「溶かされたって?」
「スライムに溶かされたんだよ」
「あぁ、それは勘違いだよ。
溶かしているように見えるけど、実は吸収しているんだよ。というか、リリースの衣服も溶かされたの?」
「うん」
セウスがニッコリ笑顔で俺を見てくる。
羨ましいとでも思ってるのか?
「大好きな女の子の体はどうだった?」
「好きじゃないよ。というか、体なんてそんな見てないよ」
「もったいないね」
もったいないじゃないよ。
「ねえ、なんで吸収したのにここに衣服があるの?」
「吸収した衣服が時間経過で自分の体から離れるからだよ」
脱皮的なものか?
「でも、こんなに綺麗な状態で見つかるのはすごいね」
「珍しいの?」
「そうだね」
一気に吸収されたから、元の状態とほぼ同様の形で保てたのだろう。
あの吸収は今でも忘れられない。
吸収というよりかは、溶けるだが。
「懐かしいね」
「そうだね」
衣服ガ見つかって嬉しいぜ。
「ちょっと着替えてくるね」
リリースは衣服を持ち、木陰の方へ行った。
「サトルも着替えたら?」
「俺は別に
「着替えなよ。リリースと運命の出会いをしたときに着た服だろ?」
運命でもなんでもないのだが……
でも、懐かしさは感じるので、着替えてみるか。
着替えが終わった。
ポケットに、桜から貰ったお守りが入っていたことに驚いた。
一年の時を経て桜のお守りを……
感謝しかない。
「着替え終わったよ」
リリースが走ってやってきた。
「サトルが持ってるのは何?」
「これは
手を滑らしてしまい、お守りを落としてしまった。
それをリリースが拾った。
「これ、サトルの前世のものか
お守りの棒人間を見た瞬間、リリースは驚いた表情をした。
それと同時に涙が溢れ始めていた。
「え、え……」
リリースは俺のことを何度も見てくる。
実に10度見だな。
「サトルって誠也?」
「うん」
リリースは俺のことを抱きしめた。
俺の名前を知ってるだと……もしや、桜か?
このお守りにも反応してるし、桜確定か。
「リリースって桜?」
「そうだよ……」
リリースは涙を流しながらも、笑顔を見せた。
そうだったのか。
……涙が溢れそう。
「大好き、大好きだよ」
リリースは俺のことをギュッと抱きしめる。
少々痛いが我慢し、俺もリリースのことをギュッと抱きしめた。
「俺も大好きだよ」
俺も我慢しきれず、涙が溢れ出してしまった。
桜とまた出会えて本当に嬉しい。
この五年間、頑張ってきた甲斐があったようだ。
「実に、実に感動的だな。俺も感化されそうだぜ」
桜、俺と出会いに来てくれてありがとう。
――――
「さすがに抱きしめすぎだぞ」
周りは暗くなり始めていた。
「大好き、大好き」
「大好き、大好き」
「一旦抱きしめるのはやめて、俺の話を聞いてくれないか?」
セウスの話? そんなのはどうでもいいんだ。
今は桜と抱きしめ合いたい気分なんだ。
外野は黙っててくれ。
「ちなみに桜と誠也を再会させたのは俺だからな。
俺の話に逆らったら、またお前らは突き放されるぞ」
そんな話より、桜との抱きしめ合いが大事だ。
「……もういいや。とりあえず、聞き流す程度に聞いてくれ。
これからお前らの夢を叶える。叶えると俺とはもう出会えなくなる。もちろん、桜の異世界てのパパとも出会えなくなる。
最後に一言残すくらいはした方がいいぞ」
「邪魔しないでください」
「最後にリリースに聞きたいことがある。
異世界のパパはどうしたい?」
「牢獄に突っ込んでください」
「裏で憎しみがあったんだな……
とりあえず分かった。もう転生させるから」
セウスは棒を出し、回し始めた。
そして、一人が入れる大きさの、異空間のような場所が発生した。
「ここに入ったら夢を叶えられ
俺と桜は異空間へと入った。
「って、俺の話を聞け!」
感謝はする。でも、邪魔はしないでくれ。
「最後の任務も終了か。成功したし良かった。
これで山を登り、頂上で神を返上したら俺もおしまいか。
……結局、あいつとは会えなかったな」
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