第29話.道中
冒険のためのお金を稼ぎ始めて、早四ヶ月が経った。
スライム池のスライム全部抜く大作戦に関しては、池の深度が思ったよりも低かったため、二週間ほどで完了した。
それからの三ヶ月半は巨大モンスターと戦闘した。
そして溜まった金は……銀貨一枚だ。
銀貨一枚のわけには深い理由がある。
何度も何度も巨大モンスターと戦闘したが、一回も倒せなかった。
クエスト成功をしたのはスライム池クエストのみ。
スライム池クエストの成功報酬は銀貨一枚。
ということで、所持金は銀貨一枚なのだ。
……無駄な四ヶ月を過ごしたな。
お金は全く貯まらなかったので、結局はセウスに用意してもらうことになった。
「こんなにいいの?」
「もちろん。これが最後だからね」
セウスは金貨15枚をくれた。
そうか。この町を離れれば、セウスともお別れになるのか。
「本当にいいの?」
「もちろん」
優しすぎるよ……
「これで冒険に出れるね」
「ついにだね!」
リリースは興奮した様子だ。
この四ヶ月で神の居場所が分かった。
神は遥か北にある、標高の高い山の頂上にいるらしい。
噂によると、パンツ一丁で待ち構えているらしい。
俺のことかな?
結局、俺はまだパンツ一丁だ。
「それじゃ、出発しようか」
――――
四ヶ月お世話になった町も今日でお別れだ。
短い期間だが、離れたくない気持ちがある。
「セウス、今までありがとう」
「もう感謝するんだ」
「そりゃそうだよ。セウスには感謝しかないから」
セウスと別れるのは寂しい。が、俺とリリースは神に会わなければいけないのだ。
「リリース、行こうか」
「うん!」
リリースは喜ぶ様子を見せた。
リリースはこの町に思い出は残っていないらしい。
俺とリリースは町から離れた。
――――
町を出てから数時間が経った。
なぜセウスがついてきているのか気になる。
「なんでついてきてるの?」
「そりゃ、心配だからさ」
「いつまでついてくるの?」
「神と出会うまで」
過保護すぎない?
セウスは俺らの保護者なの?
というか、セウスに神と会いに行くなんて話はしたことないはずだが。
……俺がいない間に、リリースが話したというパターンか。
「俺らは二人で大丈夫だよ」
「俺を見捨てる気?」
「え?」
「俺の全財産はサトルにあげたんだよ」
俺とセウスが出会ったのはつい四ヶ月前だよね?
まだ完全に仲が深まってやつに全財産を与えるのか。
というか、セウスは俺らについていく気だったのか。
なら、最後だからね、という言葉は何だったんだ?
「セウスもついてくるなら、この金貨はセウスが保管して」
「俺が保管していいの?」
「もちろん。これはセウスの金貨なんだから」
「分かった」
セウスに金貨を渡した。
――――
「サトルは洋服いらないの?」
「どっちでもいいけど」
本当は欲しい。
「俺に遠慮してるだろ。
俺が買ってやるよ」
セウスは俺の心情を読み取った。
欲しいという言葉が顔に出てたか……
衣服屋にやって来た。
「好きなもんを買え」
セウスは俺の背中を押した。
好きな衣服か……
衣服には興味ないので、安いものを選ぼう。
「これがいいな」
「おう、買ってやろう」
適当な衣服を購入した。
「どうだ。これで寒くないだろ」
「うん」
久しぶりの衣服……感動的だ。
「私の衣服も買ってほしいな」
リリースは両手に衣服を持っていた。
いつの間に衣服選びをしてたんだ。
「今私が着てる服は草原に落ちていた服だから……」
「いいぞ。リリースのも買ってやろう!」
衣服の中には、ピンク色の可愛らしいパンツがあった。
……興奮するぜ!
でも、今履いているパンツは買ってもらったやつだよな?
「今履いてるのは白パンツ?」
「そうだけど」
「それって買ってもらったやつだよね?」
「それはそうだけど、サイズが大きくて私には合わないんだよ」
そういうことか……なら、俺が貰っていいかな?
「そのパンツ欲しいな」
「なんで?」
「な、なんとなく」
「……あげない。そこら辺で捨ててくる」
貴重なパンツを捨てるなんてダメだぞ!
ここは俺にくれ!
「お願い! 俺にくれ! くれたらリリースの言うことをなんでも聞くから!」
「そこまで本気なら……あげる。けど、私の言うことは聞かなくていいよ」
「あざっす!」
ついに念願のパンツが手に入る。
俺の日頃の行いが良かったからだな。
「性癖がバレバレだぞ」
セウスが俺の耳元で囁いてきた。
これは性癖ではないんだ。
単なるパンツ好きなだけ。
このパンツをあんなことやこんなことには使用しない。
ただ、ズボンのポケットに葬り、夜暗い時間に鑑賞するだけだ。
――――
夜になった。
草原で、俺とリリースとセウスが川の字で並んでいる。
俺はホテルがよかったが、謎にセウスが
「草原! 草原で泊まるしかねぇ!」
と叫んでいたので、仕方なく草原で泊まることになった。
リリースもセウスも眠っているので、パンツ鑑賞をしよう。
俺はポケットからパンツを取り出した。
うん。最高だ。
少し嗅いでも……って、それはダメだ。
桜のパンツですら嗅いだことないのに、リリースのパンツを嗅ぐなんてあり得ない。
でも、なぜか嗅ぎたくなる……
「何を持っているかな」
セウスが話しかけてきた。
俺はパンツを咄嗟に隠した。
セウス、お前起きてたのか。
「ど、どうしたの?」
「いや、サトルがなにか持ってるから」
「き、気のせいだと思うよ」
「……どうせパンツだろ」
バレてました。
「……うん」
「でも、よかったね。好きな女子のパンツを貰えるなんて中々ないよ」
「え? 俺は別にリリースのことは好きじゃないよ」
「サトル自身はリリースに好意を持ってることを気づいてないんだね」
リリースにはときどき変な感情を持つが……好きという感情ではない!
俺は桜のみ好きだ。
桜以外に好意は持たない。
「俺が好きなのは幼馴染だけだ」
「そうなんだね。でも、リリースを好きになってもいいと思うよ」
「いや、ダメだ」
100人エッチ男だから、桜以外のやつに好意を持たせようとしてくる。
こんなやつの誘惑には屈しないぞ。
俺は桜が大好きだから!
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