第27話.冒険証

 10日間の労働が終了した。

 超しんどかった。

 一日の睡眠時間が、一時間に満たなかったのではと思うほどだった。


 あのおばあさん、本当にすごい。


「よくできたね。なら、帰っていいぞ」

「ありがとうございます」


 俺はホテルから出た。

 ホテルの前にリリースがいた。


「あ、久しぶり」

「久しぶり」


 リリースと会うのは10日ぶりだ。


「この10日、どうしてたの?」

「セウスの家に泊めてもらった」


 セウスの家か……大丈夫だったのか?

 あのおじさん、確か100人とエッチしたことあると言ってたよな。


「何も起きなかったよね?」

「え?」

 リリースは困惑した表情をした。


 表情から読み取ると、何もなかったと感じる。

 安心だ。


「とりあえず、ギルドに行こうか」

「うん」

 俺らはギルドに向かった。



 ギルドに着いた。


「リリースは冒険証を貰ったか?」

「貰ってないよ」


 貰ってないか……

 一日、受付をした意味がなくなったな。


「お金ないから冒険証が貰えないね……」

「お金あるよ」

 リリースは銀貨一枚を出した。


 もしや、セウスに貰ったのか?


「そのお金は貰ったの?」

「いや、道端に落ちていた」


 道端に落ちているなら交番に届けないと……って、異世界だから交番はないか。

 つまり、この銀貨は使用してもよいということか。


「なら、冒険証貰いにいこう」



 受付に着いた。

 

「あの、冒険証を受け取りに来ました」

「冒険証ですね。名前は何ですか?」

「サトルです」

「分かりました。少々お待ちください」


 受付の人は青髪清楚巨乳美女だった。


「私のは?」

「俺のが終わった後だよ」


 冒険証を見るのが楽しみだぜ。


――――


「少々お待たせしました」


 少々ではなく、何時間も待たされた。

 途中から存在を忘れられていたのかと思った。


「こちら冒険証です」


 冒険証は紙切れに名前が書かれてあるだけだった。

 名前を書くのに何時間もかかったのか……


「紙切れなんですね」

「そうですけど何か?」

 受付の人は笑顔で言った。が、強い圧を感じる。


「何でもありません……」

「それなら、銅貨一枚をお支払いくださ

「その前に私の分もお願いします」

「分かりました。お名前は何ですか?」

「リリースです」

「ありがとうございます。少々お待ちください」


 今回は何時間かかるかな……

 と思ったが、数秒で届いた。


「少々お待たせしました。

 こちら冒険証でございます」

「ありがとうございます」

「それなら、銅貨二枚お支払いください」

「銀貨一枚でお願いします」


 さすがに銀貨一枚で足りるよな?


「ありがとうございます。お釣りの銅貨八枚です」


 さすがに足りました。

 

 銀貨一枚は銅貨10枚らしい。


「これから冒険のためのお金稼ぎが始まるね」

 リリースは喜んでいる。


 俺もワクワクが止まらない。


「早速、クエスト受けない?」

「受けよう!」


 どんなクエストがあるのだろうか。


「あの、クエストを受けたいのですが」

「クエストですね。

 まず、冒険証の提示が必要になります」

 俺とリリースはそれぞれ冒険証を提示した。


「ありがとうございます。

 それなら、こちらからクエストを選択してください」

 受付の人は束になった紙を出した。

 大体、100枚ほどあるだろう。


 まず、束の一番上にあるクエストを確認した。

 『巨大スライムを撃破せよ!』というクエストだ。

 巨大スライムにはトラウマがあるので却下だ。


 紙をめくって、次のクエストを確認した。

『巨大ワニを撃破せよ!』というクエストだ。

 巨大ワニの全長はワニの100倍と書かれている。

 元々のワニですらキツい戦闘になりそうなのに、巨大ワニといわれたら……

 これも却下だな。


 その後も次々とクエスト内容を確認した。

『巨大ゴブリンを撃破せよ!』『巨大オオカミを撃破せよ!』『巨大カエルを撃破せよ!』『ゾウの巨大な糞を清掃せよ!』

 ……なんで巨大なやつしかいないの?

 この世界には通常サイズよりも巨大サイズのやつの方が多いのか?


「受けれるようなクエストがないね……」

「全部受けれるでしょ」


 確かに受けることはできる。が、クエストを成功することはできない。


 諦め気味で紙をめくっていると、俺らに相応しいクエストが見つかった。

『スライムを撃破せよ!』というクエストだ。

 スライムなら余裕で……はないが、撃破することはできる。


「あの、こちらのクエストをお願いします」

 俺はクエストの紙を見せた。


「スライムを撃破せよ! ですね。

 それなら、こちらの紙に『失敗』と書いてください」

 受付の人が紙を出した。


 紙には『スライムを撃破せよ!』と上に書かれており、下に書く部分があった。

 下の部分に失敗と書いた。


 最初から失敗と書くのか……

 そこは成功と書くべきだろう。

 失敗なんて書いたら、クエストを受ける前からやる気をなくしてしまう。


「ありがとうございます。

 それでは、詳細を説明しますね」


――――


 スライム池に行ってスライムを倒せ。スライム池はそこら辺にある。

 という説明を受けた。


 初のクエスト……ワクワクしてきたぜ!

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