第24話.酒

「ふぅ、日頃のストレスを発散できたぜ。

 ……なんかエロいことをする気がなくなったな。おい、さっきの話は忘れてくれ」

 チャラ男はリリースから離れていった。


「……大丈夫?」

「全く大丈夫じゃないよ」


 多分、股間は無くなりました。


「なら、仕事の続きをやろっか」

「……え?」


 俺は怪我をしているんだけど……


――――


「お疲れ様!」


 受付の仕事が終了した。

 これで冒険証が作成できる。


「帰ろうか」

「ごめん。俺、予定があるんだ」


 仕事が終わったので、セウスのところに向かう。

 リリースには申し訳ないが、飲ませていただく。


「私もついていきたいな」

「いや、リリースにはまだ早い」


 リリースは15歳。まだお酒を飲める年齢ではない。

 俺も酒を飲める年齢ではない。と思ったが、ある国では酒は16歳から飲める。

 

 まぁ、そもそも異世界には禁酒年齢がないらしいからな。

 それならリリースも飲めるって?

 そうだとしても、さすがに15歳には飲ませられないよ。

 でも、前世の年齢も合わせたら三十路……

 ま、まぁ、ここは帰らせよう。


「ついていきたい」

「先に帰って」

「帰る場所がないけど」


 ……そういえばそうだったな。

 ここで離れれば、その後逸れる可能性がある。

 逸れてしまえば……リリースとは一生会えない。


 逸れる危険性があるなら、ついていかせるべきか。


「分かった。ついてきていいよ」

「よし、酒飲めるぞ!」


 酒の存在を知ってたんだね……



 バーに着いた。


「おぉ、待ってたぞ!」

「おっちゃん!」

「おっちゃんじゃなくてセウスだぞ」

 セウスは睨むような目つきをした。


「あ、せ、セウスさん」

「呼び捨てでいいぞ」

「セウス」


 バーのテーブルには酒が並んでいた。


「パンツ一丁のやつと運命の出会いをできたから、奮発しちゃったぜ」


 どれも美味しそうだ。

 口だけでなく、鼻からもヨダレが垂れかけたぜ。


「ありがとうございます」

「感謝なんかいらないぜ。これは俺が奢りたいと思っただけだからさ」


 人生の先輩! 優しすぎますよ!


「美味い!」

 リリースはすでに酒を飲んでいた。


「早いよ」

「ハッハッハッ、頑張った後なんだし、早くなるのは当然だろう」

「まぁ、そうだね」


 俺も家に帰ったら、すぐさまゲームに飛び込んでたもんな。

 このせいで勉強が上手くいかなかったのは苦い思い出だが……

 

「サトルも飲め」

 酒を一口入れた。


 ……美味いぞ。

 美味すぎて飛びそうだ。


「美味しいか?」

「美味しいよ!」


 なんだかぽかぽかする。


「おつまみもあるぜ」


 おつまみだと……最高すぎるよ。


「これがおつまみだ」

 セウスは緑色のものを出してきた。


 ……草だな。

 酒のつまみが草?


「この草は美味いよ!」

 リリースがむさぼり食っていた。


 草が美味しい?

 それはありえないだろう。


「サトルも食え」

「これは遠慮を

「食え」

 セウスから圧を感じる。


 これを拒否したら、股間をボコボコにされそうだ。


「い、いただきます」

 一口放り込み、飲み込んだ。


 ……不味い。

「あれれ? これ美味しいぞ!」

 とはならなかった。


「美味いだろ」

「美味いです……」

「なら、もっと食いな」

「いやいや、セウスさんが食べるべきですよ」

「呼び捨てしろ。敬語はやめろ」

「セ、セウスゥ食べて……」

「ハッハッハッ、半分にして食おう!」


 草をむさぼり食う運命らしいです……


――――


「○△○△△」

「あっはっは、そりゃ面白いな!」

 リリースは顔が真っ赤になっている。


 リリースは酒に酔ってるせいか、何を言っているのか全く分からない。

 セウスはそんなリリースの言っていることを理解しているらしいが……


「○○○△△○△」

「ハッハッハッ、そりゃ面白いな!」

「○△△○△○」

「ハッハッハッ、そりゃ面白いな!」


 セウスもリリースが言ってていることを理解していないらしいな。


「おい、サトル! 冒険証は作れたか!」


 冒険証……作り忘れてたな。

 今日一日の労働が無駄になるところだった。


「忘れてました」

「ちゃんと明日には取っておけよ!」

「はい」


 思い出させてくれてありがとう。


「なぁ、サトル。何か相談したいことはないか?」

「急にどうしたんですか?」

「あぁ、サトルは初だったな。

 俺は酒を飲む際に、必ず仲間の相談を聞くんだ。だからサトルの相談も聞きたいと思ってな。

 どんな相談でもいいぞ!」


 どんな相談でも……

 難しい相談でもするか。


「俺、好きな人がいるんです」

「おぉ、恋愛話か! 俺の大好物だぜ! ちなみに俺は100人の女とエッチしたことあるぜ!」


 お、おう、そうなんだ……


「そ、そうなんですね」

「そうだぞ。で、その後の話は何だ?」

「好きな人と会いたけど、もう会えないんですよね……」


 会える! と思うときもあるが、やはり会えないと思うときの方が多い。


「なるほどな。

 ……会えないとは思わない方がよいぞ」


 セウスには詳細の話をしてないから、そういう回答になるよね……


「会えない……と思ってたとしても、案外すぐ近くにいたりするんだぞ」


 そうだったらいいな……


「だから諦めるな! 会えると思え!」

 セウスは真剣な眼差しをした。


 ……セウスのおかげで、少し傷が治った気がする。

 そうだな。桜は近くにいるけど会えない、ということにしよう!


 ありがとう、セウス。

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