幼馴染の夢を叶えるべし〜転生したので叶えられません。仕方ないので、異世界での生活を頑張ります〜

第23話.受付

　俺とリリースは受付に入った。

　早速、俺のところに一人来た。

「パンツ一丁って最高だよな」

「そうですね……」

　バーにいたパンツ一丁の人だった。

　ダンディーなおじさんだ。

　パンツ一丁の人は俺のことを気づいてたのか……

「パンツ一丁って開放感あるくない？」

「そうですね……」

「それが最高なんだよね！　分かるよね？」

「そうですね……」

　この人陽キャだよ！

　苦しい、苦しいよ！

「お前の名前は何って言うんだ？」

「サトルですぅ……」

「強そうな名前だな！　俺の名前はセウスだ」

　ゼウスですか？

　ゼウスなら、俺の願いを叶えてもらいたいです。

　……と、現実逃避してもダメだな。

　セウスか。良い名前だな。

「サトルは冒険証のために、一日受付の人になったんだろ？」

「はい……」

　なんで知ってるんだよ。

　こっそりと俺の後ろにいたのか？

「よく分かりましたね」

「息を潜めた甲斐があったぜ」

　俺にバレないように隠れてたんだね。

「おかげで息ができなくて死にそうになったぜ」

　それは息を潜めるではなく、息を止めるだな。

　平和な盗み聞きなんぞに命をかけるな。

「受付の仕事が終わったら、酒でも奢ってやるぞ」

　酒か……まだ飲める年齢ではないんだよな。

「そのお気持ちはありがたいですが、まだ酒を飲める年齢ではなくて……」

「年齢？　酒を飲むのに年齢なんて必要ねぇじゃん！」

　異世界ではそうなんですね。

　なら、お言葉に甘えて……飲んでもいいよな？

「そうなんですね。なら、飲みたいです」

「いいぞいいぞ。なら、パンツ一丁出会い記念として、今日はジャブジャブ飲むぞ！」

「おぉ！」

　……あれ？　俺、陽キャと仲良くなってるぞ。

　もしかして、俺はコミュ障ではなかったのか？

　コミュ障なら陽キャと会話はできない……

　俺は勘違いしてたんだな。

　実際は陽キャだった。

　俺は超絶イケメンだし、陽キャなのは当然だったか。

　これならナンパでも……桜がいるからダメだぞ！

　俺は桜にナンパしろ！

「それじゃ、バーに戻るよ」

「分かりました」

「お前より俺の方が年上だが、俺に対しては敬語は必要ない」

　年上にタメ口でいけと？

　……仕方ないな。タメ口でいってやるか！

「分かった」

「それじゃ、また後で」

「おう」

　俺は今までの人生でも類いないほど興奮している。

　友達は最高だな！

「どうしましたか？」

「おっ、可愛いな」

　リリースの受付に若い男がやってきた。

　ズボンのポケットに両手を突っ込んでいる。

　茶髪で、チャラ男のように見える。

「用件は何でしょうか？」

「早速言っちゃっていいかな？」

「いいですよ」

　嫌な予感がする。

「触らせてくれ」

　胸を触らせてくれ、ということか。

　嫌な予感が的中した。

　受付の人にそんな発言をするのはやめた方がいいぞ！

　ここは陽キャな俺が指摘してやろう。

「そこのお兄さん

「上腕三頭筋を」

　は？

「いいですけど」

「ありがとう！」

　チャラ男はリリースの上腕三頭筋を触った。

　この場合は胸を触るのではないか？

　俺がその立場なら胸を触るが……

「あんたすごいな。こんな上腕三頭筋は触ったことないよ」

「そうなんですか」

　リリースは困惑した表情をしている。

　リリースも胸を触ると思ってたらしいな。

「ついでに上腕二頭筋もいいかな？」

「どうぞ」

「うひょー！　すごい！」

　……心配する必要はなさそうだな。

「触らせてくれてありがとう」

「どういたしまして」

「あ、お礼としてこれあげる」

　チャラ男は白く輝くものをリリースに上げた。

「これは？」

「これはって、銀貨でしょ」

　銀貨だと！

　銅貨の上位互角じゃない？

「銀貨……ありがとうございます」

　チャラ男は去っていった。

「銀貨貰ったの？」

「うん」

　リリースは銀貨を見せた。

　普通に銀貨だ。

「これ、銅貨にしたら何枚かな？」

「分からないよ」

「なら、次渡されたときは銅貨何枚になるか聞いてね」

「分かった」

　さすがに銅貨二枚以上の価値はあるよね？

　……でも、まだ分からないか。

「超可愛いじゃねぇか！」

　リリースの受付に若い男がやって来た。

　ズボンのポケットに両手を入れ、少々腰を反っている。

　黒髪だが、チャラ男に見える。

「用件は何でしょうか？」

「言っちゃっていい？」

「いいですよ」

「お前にこの金貨を二枚やる。が、やるには条件がある」

「条件とは？」

「一時間、俺と一緒にエロいことをする」

　ダメなやつが来たな。

　こいつは指摘しなければならない。

「その前に、金貨二枚は銅貨何枚か気になります」

「そんなのもしねぇのか。ふんっ、仕方ねぇな。先輩の俺が教えてやろう。

　金貨二枚はな、銅貨２００枚なんだよ！」

「２００枚！」

　リリースは驚いた表情をした。

　よし、指摘するぞ。

「そこのお兄さん

「金貨二枚貰いたいです！」

　は？

　貰いたいということは、チャラ男の条件を飲むということ……

　本当にいいのか？

　リリースには好きな人がいるんだよな？

　そういうことは好きな人とやるべきだぞ。

「なら、条件を飲むのか？」

「はい」

「ふっ、軽い女でよかったぜ。なら、今すぐ行こ

「ちょっと、待てい！」

　悪者を退治する勇者のように言った。

　なぜだろうか。幸福感を得られる。

「なんだよお前は」

「お兄さん、お金で釣ってはいけませんよ！」

「はぁ？　お前誰だよ」

「サトルです」

「名前は聞いてないよ」

　誰だよと言われたら、普通は名前を言うはずだが？

「とりあえず、行こうぜ。こんな邪魔くさいやつは無視したらいい」

　あれ？　俺の想像していた展開と違うぞ？

　俺が

「お金で釣るんじゃないぞ！」

　と言ったら、

「すいません。許してください」

　とチャラ男は言う。という展開になるはずだったが……

　これはどうすれば……あ、そうだ。

　こういうときは、

「この子は俺の彼女だ！」

　と言えばいいんだ。

　これはラブコメで学んだことだ。

「この子は俺の彼女だ！」

「え？」

　リリースが、何を言ってるの？　と訴える目をしている。

　いや、これはリリースを助けるために言ったんだ。

「本当か？」

「いや、違うけど」

　ここは、

「そうだよ！　だからあんたみたいな男にはついていかない！」

　という展開になるのでは？

「なんだよこいつ。生意気だな。

　一発、殴った方がよさそうだな」

　え？

「ほい」

　チャラ男は俺の頭を殴った。その後、腕、足、股間の順で殴った。

　……何で股間を殴るんだよ！

　妄想で股間を殴るのはよいが、現実で殴るのはいけないぞ。

　現実で股間を殴っていいのは小学生までだ。

「リリース、助けて」

「凶暴だから無理かな」

　股間が！　股間がなくなる！