第22話.ギルド

「誰かパンツをくれ!」

「あそこに落ちてるよ」

 リリースは指を差した。


 指を差した先を見てみると、白パンツの存在を確認できた。

 道端にパンツが落ちているとはどういう状況……と思ったが、パンツの先を見てみると、さっきの貴族らしき人が確認できた。

 ……結局、俺のためにパンツを買ってくれたのか。


 ありがたや。ありがたや。


「よし、これで町から追放されなくなる

 リリースが白パンツを履いていた。


「なんで履いてるんだよ」

「スースーするから」

「早く脱いで俺にくれ!」

「嫌だ」

「また叩かれるのは嫌なんだよ!」


 あの痛みは思い出したくない……


――――


 貴族らしき人を説得して、リリースのパンツも買いました。

 みんな幸せな状態です。

 めでたし。めでたし。

 

「ギルドがあるらしいよ!」

 リリースは看板に指を差した。


 看板には、『ギルド1500メートル先』と書かれている。


「ギルドって、クエストを受けるところ?」

「多分、そうじゃないかな」


 ギルドか……なんだかワクワクするな。

 色々な依頼を受けて、依頼者からの感謝をもらい、優越感に浸る……最高じゃねぇか。

 あ、スライム討伐の依頼は受けないぞ。


「ギルドに行ってみようか」

「そうだね」


――――


 ギルドに辿り着いた。

 ギルドに近づき始めてからは、木造建築が中心だった街並みがレンガ建築中心になり始めた。

 しかし、ギルドは木造建築だ。

 外観からだと、かなり大きな建物と考えられる。



 ギルドに入った。

 中央に食事場、右端にカウンター、左端にバーがある。

 食事場がギルドの大半の面積を占めている。


 バーにパンツ一丁の人がいた。

 俺の仲間だ。

 これで恥じる必要がなくなった。

 ということで、カウンターに向かおう。


 

 カウンターに着いた。

「リリースが話して」

「いや、サトルが話すべき」

「俺はさっき頑張ったんだ。だから、次はリリースの番だよ」

「コミュ障を治そうよ!」

 リリースは俺の腰を押した。


「どうかしましたか?」

 カウンターの受付の人が話しかけてきた。

 黒髪清楚巨乳美女だ。


 最高な受付だが、特に思うことはないぞ!

 ……パンツ見たいなぁ。


「く、クエストってどうやって受けますか?」

「クエストは、冒険証を提示してもらうことで受けることことができます。冒険証はお持ちですか?」

「も、持ってないです」

「それなら、先にお作りになるとよいですよ」

「ど、どうやって作るのですか?」

「こちらの紙に自分の情報を書いてくれれば、作ることができます」

 巨乳美人は紙を二枚差し出した。


 紙には年齢や住所を書く欄がある。


「少し書いています」

「分かりました。

 書き終わりましたら、もう一度カウンターに来てください」


 カウンターから離れ、食事場の椅子に座った。


「私にも紙を見せてよ」

 リリースに紙を渡した。


「とりあえず、個人情報を書けばいいんだね」

「そうだね。

 でも、豪邸の住所は知らないんだけど……」

「住所は必須記述じゃないから、書く必要はないよ」


 紙をよく見ると、必須記述は名前だけだった。


「名前書いたよ」

「私も書いたよ」

「なら、カウンターに戻ろうか」


 カウンターに戻った。


「か、書きました」

「ありがとうございます。

 冒険証二枚ですので、銅貨二枚となります」

「銅貨とはなんですか?」

「銅貨は銅貨ですよ」


 異世界の通貨なのかな……

 ……通貨は一切持ってないぞ。


「すいません。通貨は持ってなくて……」

「それでは作ることができませんね」


 作れないだと……

 

「無料で作ってくれませんか?」

 俺と受付の人との会話の間に、リリースが入ってきた。


「それはできません」

「そこをなんとか」

「無理です」

「どうか、どうか」

「無理です」


 リリースが過度な値切りを要求する面倒くさい人になっている。


「リリース、一旦諦めようよ」

「どうかお願いします!」

「無理なものは無理です」

 俺はリリースを引っ張った。が、全く動かない。


「なら、カウンターで受付を一時間します。なので、冒険証を作ってください」

「いいですね。ぜひ、私の代わりにしてもらって……って、ダメですよ!」


 休憩という誘惑に負けかけたな。


「なら、二時間!」

「ぜひぜひお願いします……って、ダメですよ!」

「なら、四時間」

「四時間なら今日は帰れる。最高です……って、ダメですよ!」

「なら、24時間」

「ちょっと待て!」


 これ、一生エスカレートして、

「一年間!」

 と言い出す可能性がある。


 そもそも、今の俺やリリースに冒険証は必要ないと思う。

 俺たちは神に会わないといけないのに、ギルドという誘惑に負けていた。


「今の俺たちに冒険証はなくていいよ」

「いや、必要だよ」

「必要ないって!」

「お金はどうするの?」

「お金……」


 そういえば、これからはお金が必要だったな。

 俺の衣服を買うのにもお金が必要だし……

 

「冒険に出るのはお金を稼いでからだよ」

「……分かった」

「ということで、労働一日分で冒険証お願いします!」

「最高すぎて、もう耐えられない……

 分かりました。無償で冒険証を提供します。その代わり、一日の労働をお願いします」


 お金のためなら仕方がないか。


「さぁ、働いてください!」

「冒険証は?」

「働いてからですよ!」


 これ、一日労働した後、

「冒険証? なにそれ美味しいの?」

 と言われて詐欺られることはないよね?


「働くってどんな仕事をしたらいいんですか?」

「適当に受付をしたらいいよ! 後はよろしく!」

 受付の人は走るようにギルドから出ていった。


「あ、僕の分もよろしくね」

 隣の受付の爽やかイケメン男が俺に握手をし、ギルドから去った。


 リリースだけではなく、俺も働かないといけないんだね。

 ……パンツ一丁姿で働くの?

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