第17話.町へ・前編

「玄関に準備してあるから」

「分かった」


 俺は玄関に向かった。



 玄関に辿り着くと、木の棒とコップの存在を確認できた。


「持ち物はこの二つ?」

「そうだよ」


 木の棒とコップが持ち物か。

 確かに、この二つなら一日で準備が終わるな。


「なら、冒険出発だね」

 俺は玄関の扉を開けた。


「先に出ていいよ」

 リリースは豪邸を出ようとした。が、後一歩のところで足が止まった。


「出ないの?」

「少しだけ時間が欲しいな」

「どれくらい?」

「一ヶ月」


 一ヶ月は無理だよ。


「一時間でお願い」

「……分かった」


――――


 一時間が経った。


「そろそろ出ようか」

「……分かった」

 リリースは扉の前で足が止めた。が、数秒後に足を動かした。


「行こっか」

 リリースは笑顔を見せた。

 

「うん」

 

 冒険出発だ!


――――


「この木の棒って何に使うの?」

「モンスター討伐のときだよ」


 モンスターか。

 この一ヶ月半、全くモンスターとの遭遇がなかったため、モンスターは存在しないと思っていた。が、きちんと存在するんだな。


「モンスターってどれくらい強いの?」

「スライムは強かったよ。それ以外は知らない」


 スライムは衣服を溶かすもんね。

 それはそれは強いのでしょう。

 でも、スライムとは戦闘したい。

 戦闘すればリリースの衣服が溶けて、パンツが見れる。

 ワクワクしてきたぜ!


「このコップは何に使うの?」

「水を飲むときに使うよ」


 池に辿り着いた際に使用するのか。


――――


 歩き始めて数時間が経った。

 俺は疲れて今にでもダウンしそうだが、リリースは元気だ。


「ちょっと待って」

「夜までに池に着かないといけないから無理」


 池までは三時間だよな?

 休憩しても余裕で夜までに辿り着くはずだが……


「一旦休もうよ」

「休んでたら夜になっちゃう」

「大丈夫だから、休もうよ」

「……分かった」


 よかった。

 

「休憩時間は三分ね」

「は?」


――――


 池に辿り着いた。

 周りが薄暗くなり始めた。


 休憩は十分しか取ってないはずだが、思ったよりも時間が押した。


「目標までは辿り着いたね。今日はここで眠ろうか」

「うん」 


 正直に言おう。俺は町に辿り着くのが無理かもしれない。

 三時間しか歩いてないのに、ずっと息が荒れている。


 肺がハイになっているな。

 ……心の中だとしても、滑っているぞ。


 とりあえず、明日を迎えるのが恐怖だ。

 明後日も、明明後日も迎えるのが恐怖だ。

 ……俺だけ豪邸に帰っていいですかね?

 いや、ダメだ。俺はリリースの手伝いをすると決めたんだ。

 30時間くらい耐えろ。


 ……帰りたいよ。 


「私、食事用意するね」

「ありがとう」


 こんな草原で食事?

 俺もリリースも、木の棒とコップしか持ってないよな……

 嫌な予感がするが、気にしないでおこう。

 とりあえず水でも飲んで、肺をローしよう。


――――


 食事が俺の目の前に現れた。

 草と草と草。これが食事らしい。

 嫌な予感は的中しないでくれ。


「これ食事じゃなくない?」

「食事だよ」

「草を食べるの?」

「異世界だし、食べるんじゃない?」


 異世界でも食べないよ。


「これは食べれないよ」

「私は食べるよ」

「なら食べて」

 リリースは草を口に入れ込んだ。


 リリースは草を食べれるタイプなんですね。

 俺は食べれないタイプなので食べません。


「お、美味しい」

 リリースは不味そうに草を食べている。


 不味いなら食べる必要はないぞ。


「こ、これは

 リリースら草を吐き出した。


「この草はハズレだったかも。別の草を拾ってくるね」


 草に当たりもハズレもないよ。

 とりあえず、拾う必要はない。

 

――――


「これは

 リリースは草を吐き出した。


 これで12回目の吐き出しだ。


「これも不味かった。次の草を拾うね」

「どの草も不味いし食べれないよ」

「本に食べれるって書かれてたよ」

「何の本だよ」

 リリースは本を差し出した。


 何で冒険で本を持ち出しているんだ?


 この本は、50人ハーレムの本だ。

 50人ハーレムは信頼度が低いんだよな……

 そもそもフィクションの話なんだから、信用するしないというより、それ以前の問題か。

 ……100人ハーレムの本はフィクションだが信じられる。


「草は食べられないよ」

「食べれる」

 リリースは草をむしり、口に入れ込んだ。

 そして、吐き出した。


「……今日はいいや」


 明日も食う気なのか。

 草食動物になりたいのか?


 

 食事も終えたし、眠るか。

 俺の今日の食事は水だったな。

 草は食べれないので仕方がない。


 リリースは隣でぐっすりと寝ている。

 これは、パンツを見るチャンスだな。

 スカートを捲って……それはダメだぞ。


 眠っている女の子に危害を加えるのは、この世で四番目にしてはいけない行為だ。

 ということで、我慢しよう。


 俺は横たえた。

 

 あそこにパンツが一枚。

 そこにもパンツが一枚。

 あ、あっちにパンツが三枚。

 ……頭の中がパンツパラダイスになっている。

 パンツ以外のことを考えろよ。


 パンツ以外のこと、パンツ以外のこと……

 桜のパンツが五枚。

 桜のパンツが10枚。

 ……次は桜のパンツパラダイスかよ。

 もう俺は諦める。

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