第15話.冒険者

「なんで冒険者なの?」

「冒険者というよりかは、パパ探しの冒険かな」

「そうなんだ。なら、頑張ってね」

「それで、サトルにも手伝ってもらいたいと思って……」


 俺は手伝わなければならないのか。

 まぁ、衣食住を用意してもらってるし、当然か。


「手伝いって何?」

「一緒に冒険をすること」


 かなり難度の高い手伝いだな。

 その手伝いは、衣食住の提供だけでは足りない。

 リリースがこの場でパンツを見せてくれるなら、条件を満たしたいということで手伝ってあげる……じゃないよ。

 この一ヶ月半で、俺はリリースにどれほど助かったんだよ。

 リリースがいなければ、俺はそこら辺で野垂れ死にしていたんだ。

 だから、衣食住の提供がなくても手伝うべきだ。


「一緒に冒険をするだけでいいのか?」

「うん」

「なら、手伝うよ」

「ありがとう」


 手伝うと言った瞬間、ボランティアをしたときと同じ快感を得た。

 良いことをすると、快感を得られるな……じゃないよ。

 リリースに恩を返すために手伝うんだ。

 快感なんぞ得るような行為はいけない。


「なら早速だけど、パパを見つけるまでの道筋を教えるね」

「その前に、リリースの母の話も聞きたいな」

「なんでママ?」

「ママも冒険って嘘でしょ」

「い、いや、嘘じゃないよ……」

 リリースは暗い表情をした。


 今、ママのことを追求するべきではないか。

 ここでママのことを追求したら、リリースの心が苦しくなりそうだ。


「そうなんだ。なら、道筋を教えてほしいな」

「うん、分かった」 


 ママのことについては、また後日にしよう。


「まず、この冒険の最終目標は神に出会うことだよ」


 神か……なぜ神?


「神と出会ったら何かあるの?」

「神と出会ったら願い事を一つ叶えてくれる、という噂が本に書かれてたの」


 つまり、神に出会って

「私のパパを豪邸に連れ戻してくれ!」

 と言うと、パパが豪邸に帰ってくるということか。


 でも、噂だよな。


「その噂って信憑性があるの?」

「あるんじゃない?」

「その噂が載っていた本を見せて」

 リリースは本を一冊差し出した。


 ……100人ハーレムの本だな。

 この本の噂なら、信憑性があるぞ。


「神と会うなんて可能なのか?」

「本に会えると書かれていたよ」


 多分、無理だね。

 神は天界にいるはずだ。

 タケコ○ターが異世界にあるなら会えるが……


「神と会うなんて不可能だと思うよ」

「そうかな……」

 リリースは暗い表情をした。


 一応、本について聞こう。


「神と出会える、と書いていた本はどれ?」

「これだよ」

 リリースは本を差し出した。


 ……100人ハーレムの本だな。

 この本に書かれているなら信頼できる。


「神と出会うまでの道のりはどうなの?」

「半年くらい歩いたらいいのかな」

「どこに?」

「北の方」


 北の方か……そもそも、神はどこにいるんだ?


「神はどこに住んでいるの?」

「最北端のところかな」

「最北端って、どんなところ?」

「それは分からない」


 分からないか……でも、最北端にいるのは確実だろう。


「最北端に着くまで半年かかるということ?」

「そうだね」


 半年なら、思ったよりも早く着くな。


「冒険っていつするの?」

「準備ができ次第かな」

「準備はどれくらいかかるの?」

「一ヶ月」


 一ヶ月後には豪邸から出ていくということか。


「準備って何をするの?」

「色々と」

「何か手伝うことはある?」

「ないよ」


 ないのか……

 何か手伝いたいと思ったが、仕方ないか。


――――


「準備が終わったよ」

「え?」


 準備を始めたのは昨日。

 つまり、一日で準備を終了させたようだ。

 一ヶ月かかると言ってたよな?


「本当に終わったの?」

「うん」

「一ヶ月かかるんじゃなかったっけ?」

「案外、準備するものがなかった」


 まぁ、準備は早い方が良いか。


「なら、冒険スタートだね」

「そうだね……」

 リリースは暗い表情をした。


 何か不安があるのだろうか。


「どうしたの?」

「どうしてもないよ」

 リリースは笑顔を見せた。


 何かありそうだが、気にしないでおこう。


「なら、明日あたりに出発かな」

「一ヶ月後に出発するよ」


 一ヶ月か……え?

 準備か終わっているのに、一ヶ月も豪邸にいるの?


「長くない?」

「冒険に出る前の休暇としての一ヶ月だから、むしろ短いよ」


 早く神に出会いに行った方がいいけどな…… 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る