第13話.異世界語

「異世界語を学ぼう!」


 俺は転生をしてから、15日が経った。


 ついに、異世界語を学ぶときが来たようだ。


「一ヶ月でいけるの?」

「もちろん」


 一ヶ月は無理だと思うけどな……


「どんな勉強をするの?」

「明るい時間は異世界の本を読んで、暗い時間は私と一緒に異世界語で話すの」

「暗い時間は寝るんじゃないの?」

「異世界語を学んでいる間は、暗い時間も寝ないよ」


 ……少々、嫌な予感がする。が、気にしないでおこう。


「異世界語ってどんな感じなの?」

「△△○○?」


 これが異世界語か。


「△△○○?」

「何って言ってるの?」

「△△○○?」

「前世の言語でお願い」

「大丈夫? って聞いたの」

「そうなんだ」


 聞いた感じだと……アラビア語と同程度の難度のようだ。


「これを一ヶ月は無理だと思うな……」

「絶対にいけるよ!」

 リリースは真剣な眼差しで見てきた。


 ……信じてみるか。 


「ちなみに、本ってどんな本?」

「こんな本」

 リリースは目の前に大量の本を置いた。


 ……全てが100人とハーレムを形成する本だ。


「これで異世界語を学ぶの?」

「そう」


 ……頑張ります。

 

――――


「○△△○△」

「聞きたくないよ! やめて、やめて!」

「どうしたの?」


 異世界語を学び始めて三日。

 一睡もしていない気がする。


「寝させて」

「寝る前に覚えないと」

「無理! 無理! 無理!」


 頭が爆発しそうだ。


「これじゃ、15日じゃ覚えられないよ」

「一ヶ月じゃないの?」

「15日に変更した」

「一ヶ月にして」


 これが15日……睡眠不足で死にそうだ。


「とりあえず、寝させて」

「……仕方ないね。少しだけだ

 俺はダッシュでパパの部屋に行った。

 そして眠り……


――――


「起きて! 起きて!」

 なんだか、体が揺さぶられている気がする……


「後一時間だけ」

「もう外が明るくなり始めてるんだよ!」


 俺が寝たのは真っ暗な時間だった。

 なので、まだ数時間しか経ってないはず。


「まだ寝たい」

「異世界語の勉強しないと!」

「おやすみ」

 睡眠欲には抗えない。


――――


 目を覚ますと、ガンガンに日が照っていた。

 昼のようだ。


 立ち上がろうとすると、横にリリースがいることを確認した。

 ……なんでいるの?


 リリースがなぜいるのか思い出せ……

 俺は昨日の深夜、ベッドにダイブをした。

 そして……それ以降のことを覚えてないな。


 俺はソロリソロリとパパの部屋から飛び出そうとした。が、リリースが目覚めてしまった。


「あ、サトルおは、って何でサトルがいるの?」

「それはこっちのセリフなんだが」


 ベッドは左端にあり、ベッド以外の物は何も無い。

 俺の部屋で確定だよな。


「サトルが私の部屋に、あ、私がサトルの部屋に入ったのか」


 そこら辺の記憶が曖昧だが……まぁ、そうなのだろう。


「そして、サトルを起こそうとしたら私が寝ていたのか」

「だから俺のベッドで寝てたんだね」

「ベッド?」

「え?」


 俺、何もやらかしていないよね?


「ベッドで寝たっけ……」

「気づかない間にベッドで寝てたんじゃない?」

「床で寝てた。うん。床だよ」


 そ、そっか……俺はやらかしているらしいな。


 リリースは衣服を着ている。

 最悪の状況は起こってないな。

 だが、二番目に最悪な状況は……


「キスはしてないよね?」

「キスしたの?」

「してないよ。でも、昨日の深夜から記憶がないから、もしかしたらと思って」

「してないんじゃないかな」


 ファーストキスは桜、と決めていたため、よかった。


 ということは、俺はやらかしていない……

 いや、まだ可能性はある。

 リリースのパンツを見ようとした可能性がある。


「サトルって、誰かキスしたい相手がいるの?」

「え、なんで?」

「私がキスしてない、って言ったら安堵したから」

「まぁ、い、いるにはいるね」


 桜とキスがしたい!

 浜辺のベンチで熱々なキスを……


「私にもいるんだよね」

「そうなんだ」

「絶対に無理なんだけどね」


 絶対か……危ない。

 トラウマを思い出しそうになった。


 桜とは絶対にキスできる。

 絶対だ。 


「とりあえず、朝食でも食べよっか」

「うん」


 ……リリースがベッドにいたのは、俺がリリースのパンツを覗こうとしたから。ということにしよう。


――――


 朝食を食べ終わった。

 ということは、異世界語を勉強……嫌だな。


「今から、異世界語を勉強するの?」

「そうだね」

「勉強するにしても、睡眠時間が欲しいな」

「……そうだね」


 睡眠時間は貰えないと思ったが、貰えそうだな。


「サトルに勉強を教えるのが楽しくて、睡眠時間とか食事の時間とか忘れてたんだよね」


 そんなリリースが、俺には鬼に見えたよ。


「私、勉強教えるのが好きなんだよね。前世のときも友達によく教えてたからね」

「そうなんだ」


 俺は教えてもらった側だったな。

 桜によく教えてもらっていた。

 桜の教え方はとても上手かった。

 先生かと思うくらいだった。

 何を質問しても完璧な答えが返ってくるし、分からない問題があったときは、理解できるように教えてくれた。


 桜の部屋で勉強するときは、桜がトイレに行っている隙にパンツがないか探して……

 結局、パンツは見当たらなかった。


 とりあえず、楽しい楽しい勉強時間だった。

 楽しさの八割がパンツ探しだったが。


「睡眠時間は必要だよね。私、焦りすぎちゃったよ」


 焦りすぎどころではなかったぞ。

 後二日も睡眠をしていなかったら、頭が爆発してたぞ。


「一ヶ月ね。なら、一日二十時間勉強かな」

「……は?」

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